「あっ、はあっ、くっ、真夢っ、まくっ……!」
ある日現場での休憩中、野郎どもが群がっていた。
「何だ?この騒ぎは」
「お、弾!お前もほら、一つやるよ」
「ん??何だこれ?」
手に渡された筒状のものを見てもよく分からねえ。
「おーやだやだ、しらばっくれやがって」
「いや、マジで分かんねえよ。なんだこりゃ?」
「だから、オ◯ホだよ。聞いたことあんだろ、T××GAとか」
俺はそれを聞いて面食らう。
いや、聞いたことあっけど、知ってはいるけど、実物手に取ったのは初めてだ。
「純情ぶりやがって。要らないなら返せ!」
「いやいやまて、要らねえとは言ってねえだろ??でも何でこんなもん配ってんだ??」
何でも社員のご家族がこういったものの制作に関わる仕事をしているそうで、その試作品を男性社員に試して欲しいので無料でサンプルを配布するに至ったそうだ。
「へえ〜、すげえなあ」
「だから安心して貰って大丈夫らしいぜ。感想はネットで匿名で書けばいいらしいから身バレもしないと来たもんだ。ありがてえ!!!」
「おいおい…………そんなにいいのか、コレ?使ったことあんのかよ」
俺は今まで彼女がいたこともなく、女と縁のない人生を送ってきた。たまに可愛いな〜、とか浮かれた目を向けることもあったが、特に発展することもなく現在に至る。
それに、今、俺には……
「バッッッッカかお前。イイどころの話じゃねえぞ」
「そんなにかよ」
ちょっと興味が出てくる。
「乱暴にしても相手を傷つけたりすることもないし、これは繰り返し使えるタイプの上級モンだ。ここのはすげえんだぞ、試作品でも頂けるなんてすごいことなんだからな?」
教えてくれる奴らは、配布してくれた社員に対して拝んでいる。
「へえ〜そりゃすげえな」
感心する俺に、周りの奴らはニヤけて小声で話す。
「だからな、弾。これを、月野ちゃんだと思ってめっちゃくちゃなオ◯ニーが出来る、って事だ♡」
俺は手からその筒を落っことした。
「はっ、はぁ!?おま……なんてこと言いやがる!!!」
「何を今更……お前が月野ちゃん命な事くらい知らねえ奴居ねえだろ?」
「!!?」
周りを見渡すとうんうんと首を縦に振って、源三の野郎は大笑いしている。
クソが!!そんなに笑うんじゃねえよ!!
そんで、そんなにバレてんのかよ!!
「あの子、可愛いし仕事も出来るのに、わざとか?ってくらいお前の好意に気付いてないもんな〜」
「でもよ、それ言ったら月野ちゃんだって……、あ、いけね」
周りの奴らは慌てて口を押さえて言葉を飲み込んだ。
何だよ??!気になるじゃねえか!
そう、そんな年齢=彼女居ない歴の俺にも、今本気で惚れている女がいる。それが同じ職場で派遣事務員として働く月野真夢だ。
「ビビって告れずにいるお前は、まずこれで練習しろよ!」
「うるせえな!ほっとけ!」
確かに俺は、今の真夢との関係が壊れるのが怖くて告白できずにいた。なっさけねえ。
それでも今、真夢と楽しく過ごせるのが幸せなんだ。死ぬほど惚れてるが、告って振られでもしたら、もう話も出来なくなるかもしれない……そんなことになったら俺は生きていけない。
そもそも俺みたいなモテない男なんかが真夢に相手にされる訳がないのだ。
とはいえ、あれだけの上玉、いつまでもそんなビビってたらどっかの男に連れ去られちまうのも分かってる……
目に見えてしょぼくれ出した俺に周りは慌てる。
「いやいやいや、違うって弾。そういう意味じゃなくてだな……あーもうめんどくせえな!言っちまいてえ!!」
「だめだ、早まるな!!」
ざわつく周りに聞く。
「どういう意味だよ?」
「まあ、それはおいおいな?とにかくまずはこれ使ってみて、自信をつけるってのはどうだ?」
「……は?」
「だから、このオ◯ホでさ。これでイケる良さがわかったら、本当に好きな女と……って、がんばれるかもしれねえじゃん?」
「おい、そんな無理矢理な意見、いくら弾でも……」
「そんなもんかよ?」
焦ったやつのフォローと俺の納得が同時に入る。
「おう、そうだぜ?何事もチャレンジしてみないとわかんねぇだろ?」
周りは呆れつつホッとした様子で続ける。
「それに、月野ちゃんで妄想しながら使うんだろ?なら予行練習にもなるだろうし、いいじゃねえか!」
「バッッッ!!そんなこと……!!」
「何言ってんだお前。一度もあの子でやった事ないとは言わせねえぞ??」
「………」
図星を突かれて黙り込む。
「だからよ〜、ほら、これやるからやってみろって!」
「あーもう分かった!ありがたく使わせてもらうぜ!!」
こうして俺は半ばヤケになって、もらった筒状のオモチャを手に取る。
「あんな可愛い子が妄想とはいえ好きに出来るんだぜ〜!?可愛いだけじゃなくて優しいし、声も可愛いし、胸も……」
「あっ、バカ!!」
慌てて止めた奴がいたけど、遅かった。自分でもみるみる般若のような顔になっていくのがわかる。
「うぉおおおっっ!!お前らマジ許さんぞ!!!真夢を何て目で見てやがんだ!!!」
「うわあああ!!わり、悪かった、ごめんなさいぃいいいっ!!」
「ぎゃははははははっ」
「源三てめえ笑ってんじゃねえ!!!」
「バカだなお前ら、弾に真夢のそんな話したら怒るに決まってんじゃねーか」
源三が爆笑しながら失言した奴に嗜める。
「そうだった……そうだよな」
「そういうのは黙ってやんねえと」
「何だとてめええええ!!真夢は俺んだ!!!!!!」
「えっ?何の話?」
!!!!!?!?
一同がバッ!!!と超絶可愛い声のする方を見ると、そこには……
超絶可愛い真夢と、同僚のミカ、カンナがいた。
皆んな配られたものと配布元の箱をさっ!!と隠す。
「お疲れ様です、差し入れですよ〜!」
「おつかれさま〜」
「何してんだいアンタ達?何で今日はアタシだけ事務所なのさ」
三人は挨拶を交わすと、俺達の方を見る。
「お、おう、おつかれ」
「三人ともありがとな!」
源三の野郎が空気を読んで俺より先に返事をする。
「いいえ。皆んな暑い中お疲れ様です。水分しっかり取ってくださいね」
真夢もニコッとして皆んなにペコっと頭を下げた。
(かわええな……)
(弾がボヤボヤしてんなら行ってもいいよな?)
(俺はカンナちゃんが……)
(俺はミカかな……)
周りの奴らがボソボソ言い始め、カンナやミカまでターゲットになり始めたので源三の顔も険しくなる。
「ねえ……さっきの弾くんの言ってたやつ、なに?真夢は俺んだ、って……」
真夢が赤い顔でおずおずと聞いてくる。
しまった!!聞かれてたのかよ!?そんで可愛すぎかよ!!?
「は??!あ、あれは……その……!」
聞かれた俺の顔ももっと赤くなる。
周りの奴らは呆れている。
「……弾、それ返せ。とっとと男見せて直接体験しろ」
「体験??」
「うわーーーー!!馬鹿野郎、余計なこと言うんじゃねえ!!な、何でもねえよ真夢、ごめんな?」
真夢はジト目で俺たちを見て「またフラれちゃった……」と呟いたが、俺にはそれが聞こえていなかった。聞こえた周りは心底呆れている。ありがたい筒を返せコールが起こりつつある。
「まあとにかく、これはありがたく頂いとこうぜい!アレやソレとは違うかもしんねえんだしよ」
源三がうやむやっとその場を収めて皆散り散りになった。女達は三人でジト目をしていたが、それ以上は追求して来なかった。
べそをかいてる真夢を二人が慰めている……さっき真夢は何て言ったんだ……??
◆◆◆◆◆
勤務が終わり、現場から直帰する。
真夢と帰れないのは残念だが、トンデモ荷物を持っている今日だけは、少しありがたいかもしれねえ。
家に着き、メシやら風呂やらを適当に済ませて、例の筒を手に取る。
……どう使うんだコレ……??
説明書がついていたのを思い出して開くと、何やら図解付きで使い方が載ってる。なるほど、こう使うのか……。
まずは添付のローションで濡らすらしい。あとは、こう握って上下に動かして……??
つーかこの穴小さすぎねえ!?
自分で言ってて泣きたくなるが、いくら巨根じゃねえ俺でもここまで細くねえぞ!!?
「まあこんなもんなのか……?あとは実際に使ってって感じか……」
まずは勃てなくちゃ話にならねえ。
「真夢……」
何てチョロいんだ俺は。
結局オカズは真夢なのかよ!?そうに決まってるよ畜生!!
俺は自身を握りしめて真夢を思い浮かべる。すぐに通常では無くなっていくモノがどんどん変貌を遂げていく。
「好きだ、真夢」
目を瞑り、手をゆっくり動かす。
「好きなんだよ、ずっと……真夢、可愛いぜ……」
だんだん息遣いが激しくなり、下半身に血が集まる感覚がする。
「あ、あ、まく、らっ……!!」
あっという間にガッチガチに膨れ上がる自身と、興奮していく脳みそ。
「っ、やべえ、気持ちいいっ、くっ……!!」
快感と共に、手に力が入っていく。
「真夢っ、真夢っ、うっ、ぁっ……!!」
『弾くん……っ』
「!!」
真夢の声が浮かんで来た。俺はゆっくり筒の方を見る。
「……こんなんに使って、ごめんな真夢……」
でも、好きなんだ。
お前の事が、本当に。誰よりも。
今までで1番、他の奴となんて比べられないくらい、夢中になってるんだよ。
筒の蓋を開け、ローションを入れてみる。
『弾くん……気持ちいい……よぉ……』
だから、挿れて……?
そんな妄想が膨らんでいく。濡れた筒の穴は小さくて、とてもじゃないけど入りそうにない。
「くっ……ぅ……無理だろ……?」
それでも、お前とひとつになりたいんだ。
俺は意を決してゆっくりと先端を近づけた。
「挿れるぞ……真夢……」
はあはあと荒い息遣いが自分でもうるさい。
触れた先端がひやっと冷たくて、それが本物の真夢とは決定的に違うんだと思うと、何だかそれが救いのように思えた。
そうだ。これは練習?なんだ。この体験を経て、本当に真夢とそうなれる様にいよいよ努力していくんだ。
「よし……挿れるぞ」
本当に入るのか?と疑問だが、小さな穴にあてがった先端と筒を持つ手にグッと力を入れると少しずつ埋まって行くのがわかる。
「うおっ……!!?すげ……マジで入ってんのかよ……」
ズブ、グチュ、ヌチャッ……
「うわっ……これヤベ……!」
どんどん奥に飲み込まれていき、根元まで入った頃には汗びっしょりになっていた。
何だコレは。気持ち良すぎんだろ。何度も出るかと思ったぜ……手なんかとは全然違う……!
『弾くん、……気持ちいい……?』
「ああ……最高だよ……真夢のナカ……」
『嬉しい……!もっといっぱい動いて……!』
「言われなくても……!お望み通りにしてやるよ!」
俺は本能のままに腰を動かした。パン!パン!と肌同士がぶつかり合う音が部屋に響く。……つもりで夢中で筒と腰を動かす。
最初に挿れた時はヒンヤリしていた中が自分の体温で温かくなって、いよいよ本物を犯しているような気分になる。
「真夢……!好きだ、愛してる……!!もう絶対離さない……!真夢、真夢……!!」
『うん、私も大好き、好き、大好きぃ……!あ、あ、イク……イッ……!!』
「っく!!」
びゅるっ!!ぶりゅっ!!びゅくくくく!!!
早くも俺は達してしまった。それでも腰が止まらずカクカク動き続け、筒の上下運動も止まらない。
「あ、あ、あ、やべ……イキ過ぎてるってコレ……はぁっ……っく……!」
真夢を汚してしまった罪悪感が胸を締め付ける。
「ごめんな真夢……でも俺、やっぱりお前の事が好きすぎるんだ……」
さっきまでの行為の虚しさが一気に襲ってくる。
引き抜こうとするとカリが引っかかり、ビクンと身体が反応してしまう。
その瞬間。
「えっ……!?」
自分の意志とは無関係に、また下半身が熱を持ち始めたのだ。
「嘘だろ……!?いくら何でも復活早すぎ……」
再び硬くなっていくモノを呆然と見つめながら、俺は……
「はあっ、はあはあっ、何?この上の空気穴を塞ぐと……!?」
説明書を片手に夢中でオ◯ホを使い続ける。
『弾くん……気持ちいい……よぉ……』
「俺だって、気持ちいいぜ真夢……」
『嬉しい……!もっといっぱい動いて……!』
「言われるまでもねえよ……!お望み通り滅茶苦茶にしてやるよ……!」
空気穴を塞いでみるとギュッッ!!とバキュームされ、凄まじい快感に襲われる。
「うっ……!!何だコレ……!!くっ……!!」
俺は無我夢中で腰を振り続けた。
「あ、あ、あ、ヤベ、真夢、これヤベェって真夢ぁ……!!好きだ、愛してる……!!締めすぎだって……!!!」
『んふふう、だって、弾くんの気持ち良すぎて締まっちゃうんだよぉ……』
「くっ……あ、あ、あ、あ、あ、ダメだ、もう……!」
『いいよ弾くん……出してぇ……』
「真夢、真夢、真夢……!!ナカに出すぞ……!!うっ……!!!」
びゅっ!どぴゅっっっ!!!びゅーーーっ!!
「はあっ……はぁっ……!!」
『ああんっ……熱いの出てるぅ……』
「真夢、真夢……!!」
真夢の中に出せたつもりに幸せを感じながらも、まだまだ元気なままの自分を見て、思わずため息が出る。
「……おっぱい触りてえなあ……」
こんなものを使わなくてもいつかは……と思いつつ、とりあえず今は……と、俺はもう一度筒を動かす。
まだ全っ然硬い。もう本当嫌んなるぜ。いっつもこうなんだ。すぐ勃つしすぐ出ちまうけど、ずっと萎えないから辞めないと終わらない。
でも、これも真夢限定なんだ。俺は狂ってるんだよ、真夢に。
うつ伏せになり、本当に正常位で致しているように必死に腰を動かし、枕を抱きしめて真夢を想う。
「真夢……!好き……だ……!」
真夢を犯す妄想に浸る。
「あ、あ、あ、真夢、真夢、真夢……!!好きだ、愛してる……!!もう絶対離さない……!」
『うん、私も大好き、好き、好きなの弾くぅん……!!』
モノを出し入れすると、もうオ◯ホからは出しすぎた精液が逆流してくる。それを潤滑油にしながら動かすとグチュグチュと卑猥な音が鳴り響き、より興奮していく。
『弾くんの出したのが、いっぱい……!見てえ、出て来ちゃってるのぉ……!』
「くっ……!!あ、あ、ごめんな真夢、俺、出しすぎて……!」
もうバキュームの調節も慣れたもので、どんな風にすれば気持ちいいのかは分かっていた。
『いいよ弾くん……!もっといっぱい動いて……!めちゃくちゃにしてくれていいんだよ』
「言われなくても……!腰も精液も止まんねえよ……!」
がぽっ、ぐぽっ、どぱん、どぽんっ、ごちゅっ!ごりゅっ!
逆流精液が床に散らばっていくがもうそんなのはどうでもいい。俺は今妄想で真夢を抱くのに忙しいんだ。
「真夢……っ、キスしてえよ、胸も、ココも、全部触りてえっ……!!」
ぱたたっ、汗と一緒に涙も床に落ちていく。もうそこら辺一体全部俺から出たもんだらけだ。
『ごめんね……触らせてあげられなくて……』
妄想の中の真夢が悲しそうに呟く。
何をやってんだ俺は。妄想の中で真夢にこんな顔させて、こんな事言わせて。
『その代わり、いくらでも気持ちよくなっていいから……好きなだけ出してくれて良いんだよ……?』
「真夢……」
何も考えたくなくてひたすら手と腰を動かす。
もう今日は出なくなるまで、勃たなくなるまで出す。そう決めた。
それからも俺は夢中で擬似セックスを続けまくった。五回から後は、もう射精の回数を数えるのもやめた。
「真夢、真夢、好きだ、真夢……!!愛してる……!!すげえイイぜ真夢っ……!もうチン×イカれちまってるよ、溶けちまってる!!」
手と筒、腰を同時にこれでもかと動かし快楽に集中する。
『気持ちいい……?』
「ああっ、すっっっげえイイよ真夢、お前のトロ××最っっ高だぜ……」
そう言いかけて思う。
筒で妄想してコレだけイイんだ。愛して堪んねえ本物のお前のナカはどれくらい気持ち良いんだろう。幸せになるんだろう。
触れたい。頬でも、手でも、髪でもいい。
お前に触れたい、真夢、真夢、まくらっっ………!!
「好きだよ、真夢……」
『なら、本当の私にそう言って……?』
妄想の真夢が優しく微笑む。
ああ、お前って奴は、妄想の中でまでイイ女なんだな。
勝手に追い詰まった俺を救ってくれるのか。
そうか。そうだよな。本当のお前に言えばいいだけだよな。何言ってんだろうな、俺は。
「でも……今日はありがとな、すっげえ良かったぜ……」
ラストスパートをかける俺に真夢は微笑んでヨがる。
『良かった……最後、思いっきりちょうだいっっ……!!!』
「ああ、あ、くっ、くうっ、出、出る、出すぞ出すぞ真夢真夢真夢ーーーーーっ!!!」
びゅっ、びゅーーっ!
「はぁ……っ…………くそ……」
何回出しただろう。それでもまだ勃ちそう、出そうで……
「ああもういいや……寝よう……」
明日も仕事だ。早く起きて準備しないと。
「でも、後片付けだけはしねえと……クソッッ……」
こんな体液だらけの部屋一晩放置したら酷いことになるぜ。異臭騒ぎで通報されんじゃねえか?
「真夢……」
後片付けを一通り済ませて、またお前の事を考えながら眠りにつく。きっとまた朝には元気になってるに違いない。
だから……
「おやすみ、真夢……ごめんな」
俺は、そう言って眠りに落ちかけて……
「……いや違えな。ごめんはごめん……だけど……ありがと……な……」
それだけ告げると、深い眠りについた。
翌朝。
現場へ直行したかったが、道具を忘れちまって事務所に行かざるを得なかった。
あんな妄想オナニーでクソほどシコった翌朝なんて、どの面下げて真夢に会えばいいんだよ。真夢は何も知りゃしねえが、恥ずかしすぎるし申し訳なさすぎる……
真夢は当然事務所にいるはず。最悪だ。それでも真夢に会いたいと思うほどに俺はイカれちゃいるけどな!!
事務所に着くなり俺は真夢と出会した。
「おはよう、弾くん!!」
「おう、おはよう真夢……」
あれ?今日は現場に直行じゃなかったの??と、キラッキラの笑顔で聞いてくる真夢。いつも通りのハイパー可愛い笑顔。この確変は終わらない、可愛いRushだよな。
当たり前だがやっぱり昨日の事はバレてないようだ。安心すると同時に、少し寂しくもなる。
「あのさ、弾くん……」
「ん?」
真夢が少しもじもじした感じで言いかけて、それから意を決した様に俺に近づいて聞く。
「その……今日……私、何か違わない!?」
「何かって……?」
「えーと、何かいつもと違う感じ、とか、したりしない……?」
ぐぬぬぬ、と目をキラキラさせて、何か気合いみたいなものを送ってくる。
「………」
じっと俺の目を見る真夢をじっと見返す。
いや、まず近えよ。昨日の今日だぞ?完全俺都合だけど。そんな目で見るなよ。そんな風に見られたら、期待しちまうだろ……!
「どうなのっ!弾くぅ〜ん!」
ぐいっ、とさらに顔を近づけてくる真夢。
どうしよう。もうこのままツヤツヤの唇に噛みついちまいたいんだけど。一発でお縄だよな俺?
いつも通りハイパー可愛いし、自慢の肌がツヤツヤしてて、髪も唇もツヤツヤしてて、すんげえイイ匂いがして、近すぎてあちこち当たってる全てが気持ちいい感触で……コイツ俺以外にもこんな超接近したりしてんのかな……マジで勘弁してくれよ、そんなん見たら俺飛びかかっちまうぜ??
「どうなのっ!ってばぁ!!」
俺の思いなんてお構いなしに真夢はグイグイ来る。
珍しいな今日は、何かあんのか……?ん?でも……何か……
「イイ匂い……だけど、いつもと違う気がする……だけどお前香水好きだもんな、いっぱい持ってるしいつも付け替えてるって言ってたからそれじゃねえよな?」
すると真夢はぱあっと明るくなって、嬉しそうに言う。
「ホントっ!?やった!当たった!すごいすごい弾くん、大正解だねっ!!……実は、ちょっとだけ変えてみたんだ……どう?どう??」
そう言ってまた一歩近づく真夢。
近いよ。可愛すぎだっつの。
「どうって……イイ匂いだし、うま……いや何でもねえ!!」
「馬??」
違えわ!!!美味そうって言いそうになったんだよ!!馬って何だよもうわけわかんねえよ!!
「……何も感じない……?」
「……え……?」
俺の反応に今度は大きく落胆する真夢。
何なんだ??俺何か馬以上の失言しちまったのか???
「フェロモンでもダメかあ……そっかあ……」
真夢は一気に泣きべそのような顔になる。おい、何だよそれどういう事だよ……
「あ、あーでもアレだよ、いつもより良い匂いだって思ったぜ?だから元気出るかもしんねえよ?多分」
真夢の表情を見て焦った俺は適当なフォローをする。何だ元気って??我ながら昨日の事と連動してヤバすぎんだろ。でも真夢はそれを聞いて
「本当!?良かったあ……この後現場行くんでしょ?また行けたら差し入れ行くからね!……その時はもうちょっと量多めに付けよ」
最後はボソっと何か喋ってたみたいだったけど、笑顔を取り戻した様で一安心した。
「おう、ありがとな。無理すんなよ。でも、来てくれたらスゲー嬉しいぜ、それだけで俺は頑張れる」
そう返すと真夢はまたぱあっと明るい笑顔になった。
ああ、やっぱお前には笑顔が一番似合うな。
「うんっ!わかった、じゃあそろそろ行こっか。お仕事がんばってね!」
そう言って真夢は先にデスクへと歩き出す。
「ああ、じゃあな」
そう返して俺も現場へと向かって行った。
現場に着くと、皆んな先に作業を開始していたので、慌てて俺も作業に取り掛かる。
「何だい、重役出勤とは何様だよ弾」
ミカの奴が俺に嫌味を言ってきやがる。
「うるせえ。ちっと事務所に忘れモン取りに行ってただけだろうが」
「とか何とか言って、真夢に会いたくてワザとどうでもいいもの取りに行ったんじゃないの??」
なんて言っておちょくられる。図星過ぎて反論できねえ。
「黙れよ。そんなんじゃねえよ」
「ふーん、まあいいけどね。早く終わらせて帰って真夢に会いなよ」
昨日の野郎どもの会話を思い出す。
あの中にはミカで是非、と筒を握ってた奴もいたよな。同僚であり妹のような存在であり、逆もまた同じである俺にはまっっったく理解出来ないけど。俺が真夢の事を考えてしたように、とち狂ってコイツの事を考えてアレを使った奴もいるのだろうか。まあ相手は違うが、俺程の奴はいねえだろうけど。あ、でも源三の野郎なら……
様々な複雑な思いを頭に浮かべてる俺に、
「何だい?変な顔して。まあいつもだけど」
ミカは更に軽口を上乗せして道具を持って持ち場に移動しようとする。
「うるせえわ!!誰が変な顔だ!!」
悪態に応戦すると、ふわ、とどこかで嗅いだ匂いが鼻腔を掠める。これは……
「真夢……?」
俺の呟きを聞いてミカは酔狂な声を上げる。
「はあ!!!?!アンタ、拗らせ過ぎてついにイカれちまったのかい!!?アタシを真夢だなんて……!!」
心底引いてるミカに、俺は違う、と否定してその匂いのことを説明する。
「これ、さっきの真夢の匂いだ……ちょっとだけ、何か違う気もすっけど」
そう言った瞬間、さっきまでの嫌味な笑い顔から一転、真面目な顔つきになって俺に詰め寄る。
「弾、アンタ、すごいじゃないのさ。そうか、真夢、ってこの香水のことか」
「ああ、さっき事務所で真夢と会って話した時……」
「あの子もコレ、つけてたんだね。ね、ね、あの子何て言ってた??」
ミカはわくわくした様子で俺に聞いて来る。
「何だ?そもそも何でお前らが同じ香水つけてんだ?仲良いのは知ってるけどよ……」
「そんなのいいから!!教えてよ!」
ミカもグイグイ来んな。何なんだ??
「何か……いつもと違うとこないか、って……で、香水変えたかって聞いたら喜んでたけど、なんかそれで感じるかって言うから……」
特にわかんなくてよ……と首を捻るとミカは大いに喜ぶ。
「そっか!!やったやった、真夢随分頑張ったねえ、偉い偉い!」
「何だ??だからどういう事だよ?」
何が何だか分からねえ俺にミカはごめんごめんと謝りながら説明してくれる。
「いや、実はさ、昨日アンタ達、男子社員だけに配られたものあったろ」
うっ!!何でそれを……
「ああ、アタシは源の字からたまたま聞いたから知ってるだけで、真夢やカンナは知らないから大丈夫。でね、実は女子社員にも配られたものがあったのさ」
「え??そうなのか??」
女子にも女子向けアイテムが配られていたそうだ。全然知らなかったぜ。
「でね、これがそれ」
ミカは目の前に香水の小瓶をかざして見せてくる。
「え???じゃあそれってまさか……??」
「そう。今日真夢が付けてるのはコレ」
俺は改めてまじまじと小瓶を見る。
「……へえ、フェロモン香水………ふぇ!?フェロモン!!!?」
「そう、フェロモン香水。ほら、ここに書いてあるでしょ?」
ミカが指差した先を見ると、確かに『フェロモン香水』とデカい文字で書かれていた。
「で、でも、真夢がコレ付けてんのがどういう……」
「あんたってホントバカだよね。知ってるけど。あのね、コレさ。まあ名前からして分かるだろ?とはいっても、まあおまじないみたいなものだけどさ」
ポカンとした俺に呆れつつミカは続ける。
「落としたい相手と接近する前に付けると、抱かれちゃう位に効果ある!ってキャッチコピーみたいよ」
「!!!?!」
何だそれ。何だそれ、何だそれ!!?
だって、それじゃまるで……!!
「で、真夢もアンタの為に付けてアンタに話しかけにきたんじゃん。そりゃ気合いも入るよ。現場入りのはずのアンタが事務所に来たの見て急いで付けたんじゃない、真夢かっわいいーーー!!」
ミカはデレデレして喜んでいる。俺は全然ついて行けてない。
「マジかよ……でも、俺何も感じなかったぞ……?」
「鈍感だもんねアンタ」
ミカは一言だけ言って作業に戻って行こうとするので、必死に止める。
「待て待て待て、え?どういう事だ??だってそれじゃ……、いやまてよ、じゃあそれだと今真夢フェロモン出しまくって色んな男に抱かれる危険あんのか!??!」
事務所には男だって沢山いんだぞ。今頃真夢は……!?
「テンパリ過ぎだよバカ!!だから、おまじないだって言ったろ?現にバカなアンタはきかなかったしさ」
「うぐっ!!」
「なんでもね、付けた本人が好きな相手と接する時に出るフェロモンを倍増させる的なモノみたいよ。だから、真夢が好きな男に接近してなきゃ大丈夫。現にアタシも付けてはみたけど、アンタ何も感じないだろ」
「……お前、俺を落としたかったのか」
「叩っ斬るよ!!!?そんなこと言ってるから特大ボーナスとりこぼすんだろ!!!」
冗談を言ったら本気で怒られてしまった。
「わ、悪い悪い、わかってるよ、お前は源三だよな」
ミカはため息を吐く。
「まあ信じられないのもわかるし、テンパって冗談言ってんだろうけどさ。そういうことだから、真夢の勇気も買ってやって?あ、アタシがバラしたって言わないでよね、怒られちゃう!」
ああ野暮なことした、らしくない、とぶつぶつ言って今度こそ持ち場に戻ろうとするミカを必死に呼び止める。
「待ってくれ、最後に一つだけ教えてくれ……!!」
「……何だい、まだ何かあんのかい?」
俺の必死の様子に仕方なくミカは足を止める。
「……真夢は、俺が、……?、俺を……?す、好き……なのか?」
「はあ??何言ってんだい、そんなの当たり前だろ!!それ以外に何があるっていうんだい!ま、今日は女子社員みーんなこの香りだろうけどね!」
ミカは呆れたように言い放つと、さっさと行ってしまった。
その場に残された俺は、暫くの間、その場から動けず、ただひたすら頭の中でミカの言葉を繰り返し繰り返し反芻していた。
好き……
好き……!?
誰が誰を……、真夢が、俺を……?
待て、だって俺は昨夜妄想で死ぬほど真夢で抜い……え……??
その真夢が、俺を、好き……???つまり俺達は両想い……??
「う、うおおおおぉぉぉお!!?」
俺は奇声を上げながら、全身の血流が激しく巡り巡っているのを感じながら、そのまましばらく立ち尽くしてしまった。
「うっさい!!働け!!!」
ミカが遠くからドヤして来るので、「わ、わかったよ、悪かったっ!」と叫び返す。
「お、どうしたんだ弾?」と源三がミカに面白そうに聞いて、ミカが少し頬を染めながら話してるのが見える。源三の野郎にはミカの香水が効くんだろうか。
そうして何とかほんの少し調子を取り戻してから、俺も自分の持ち場へと戻った。とはいえ、全然手ぇ震えてっけど。作業ミスんないようにしねえと。
思い返すと、何も知らなかったさっきとは比べ物にならないくらい、真夢が輝いて見える。キラキラした眼で一生懸命俺に詰め寄って来てた。
あれは……俺に……!!
やべえ、顔あっつ……!!!!
真夢が俺のことを……? いかん、ニヤける……!
俺は作業中にも関わらず、一人ニマニマしながら黙々と作業をする。そしてふと気付くと、いつの間にか作業は終わっていた。
「弾、飯行くか?」
昼休憩になっていた。
源三に呼び止められて、初めてその事に気付いた。それくらい俺の頭はパンパンになっていた。
「俺……今、アイツと鉢合わせたらヤベぇかもしんねえ……から、一人で飯行こっかなぁ……」
「何だ、お前。ミカから聞いたぞ。めでてえじゃねえか、喜んで一緒に飯食えよ」
避けたら真夢泣くぞ、と言われて怯む。そうか、真夢は何も知らねえんだ。
「でも……俺、真夢見たら飛びかかりかねねえぞ」
源三は目を丸くして驚く。
「マジかよ」
マジだマジ。
「……お前、昨日アレ、使ったのか」
小声で聞いて来る。
「……まあな。お前は?」
「早えな!!オイラはまだだ。どうだ?良かったか?」
「そんな事言えっか馬鹿野郎!!」
思わず大声が出てしまう。慌てて口を塞ぐと、近くの奴らが振り返ったのでペコペコ謝っておく。
「バカ、声がでけーんだよ。何だ、お前の事だから三回は楽しんだのかと……」
「うるせえ!五回からは数えんのやめたわ!」
小声で怒鳴ると源三の野郎はゲラゲラ笑い出した。全くこいつは。
「じゃあもう付き合っちまえよ!お互い好きって分かったんだしよ」
「簡単に言うなよ。俺はお前と違ってモテ経験がねえんだ。いきなりそんな事言われてもよ」
「はあ!?あんな美人に好かれてるくせに何言ってやがんでい!それにオイラだって別に経験あるわけじゃ……」
「何ぃーーーっ、真夢を美人だと!?!真夢をそんな目で見るんじゃねえ!!」
「何だ!?お前めんどくせえな、世間一般で見たって真夢は美人だろ!ホラ、その美人が来たぜい!」
「え!!!?」
振り返ると真夢がカンナとやって来るのが見える。昼を一緒に食おうと事務所から現場まで来てくれたんだ……!!
二人ともこちらに気付いて笑顔で手を振る。
やべえ。こいつは本当にやべえぞ。今真夢と鉢合わせたら俺は……!!
「弾くん、お疲れ様〜!皆んなでお昼行こうと思って来たよ!」
ニコニコでキラキラの笑顔が俺にクリティカルヒット。今にも理性を失いそうな俺に、例の香水の匂いが漂って来て、嗅覚からもヤられる。
うん、カンナからも同じ匂いがする。本当に皆んな同じヤツ付けたんだな。
でも俺は分かっちまった。ミカとカンナから漂う香りの違いは分かんねえが、真夢から香ってくる香りは違う。多分真夢本人の天然モノのイイ匂いが混じってとんでもない媚薬と化してんだ。
しかも香水の匂いはさっき嗅いだ時より少し濃くなってる。付け足したのかな。てことは、そんなにも俺のことを……?
ミカに例の香水の話を聞いたからかは分からねえが、何も知らないで嗅いだ時よりずっと良い香りに感じた。
何だこれ、何だこの甘くて優しい香りは……!
すげえ良い香りだ。ずっと嗅いでいたい……。もっと、もっと……!!
俺は無意識のうちに真夢の方にフラフラ近付いていた。
「お、おい、弾……!」
源三の声が聞こえた気がしたが、今の俺には届かなかった。
うん、俺もう無理だわ。限界だわ。
目の前の真夢が愛おしくてたまらない。
我慢できなくて、気付いたら俺は真夢を抱きしめていた。
「えっ……、弾、くん……?」
真夢が驚いているのが分かるが、俺は構わずに腕に力を込める。
「弾くん…?えっ、ちょっ……どしたの……!?」
真夢の身体が熱くなっていくのがわかる。直に香りも吸い込める距離で、俺は本当にもう無理だと悟った。
「真夢、すげぇイイ匂いする」
「ふぇっ!?あ、そ、そう!?ありが……」
真夢が俺の腕の中であたふたしているなか、皆んなの方を振り返る。
「ワリ、俺、真夢と二人で部屋で食ってくるわ」
皆んな察したのか盛大にニヤニヤして祝福してくれる。
「分かったぜい。でもよ、食うのは昼飯か?真夢か??」
「ええ!!!?」
言われた真夢が目を白黒させている。ミカとカンナもキャーーッと言って顔を赤くさせつつ喜んでいる。
「後な……ちょっと体調が思わしくねえ……、真夢も熱っぽいみたいだ。少し休ませてくれねえか?埋め合わせはちゃんとすっから」
「ね、ねねねね熱なんて無いよ!!?」
真夢が慌てて否定するが無視する。
「ちっ、しょうがねえなあ。まあ午後はそんな忙しくねえし、しっかり『休憩』して戻ってこいよ!」
「戻ってこなかったら病欠早退にしとくね真夢ちゃん!」
源三とカンナがノリノリで肯定してくれ、ミカもハッパをかけてくれる。
「真夢、しっかり!弾、真夢を潰すんじゃないよ!?」
「勿論だぜ……でも自信ねえな」
首を傾げる俺に真夢はあたふたして周りをキョロキョロしている。
「な、何……!?私、全然わかんないんだけど……きゃっ!?」
「わかんなくてもいいよ。数分後には分かるぜ」
そう言って真夢の手を引いて歩き出す。目指すは事務所のすぐ横、社宅の俺の部屋だ。
「あとな、真夢」
「う、うん?」
「愛してる」
「!!!!?!!?!」
これ以上真っ赤になれるのかというくらい真っ赤になった真夢の手を引き、皆んなの興奮した声援を背に受けて、俺と真夢は俺の部屋へと向かうのだった。
