(仮)とホンモノ③

「ただいま〜」

 ドキドキして家に入ると、可愛い「おかえり」の声がない。八時回っちまったからな、疲れて寝ついちまってるのかな。

◆◆◆◆◆◆

 現場に戻ると、源三もミカも驚いていた。
「あれ!?弾、戻ってきたのかよ」
「ああ、戻るっつったろ」
「いや、確かに戻ってこいよ〜とも言ったけど……お前、大丈夫なのか?その……腰とかよ」
今三時過ぎだぞ?と源三が若干照れつつ聞いてきて、俺もちょっと恥ずかしくなる。
「まあな……なんとか」
すると、ミカが呆れたようにため息をつく。
「はあ〜……全く、アンタって奴はさあ〜……真夢大丈夫だろうね」
「うっ……だからアイツは病欠にさせてもらうことにしたよ」
「今日は割りかし暇だし、お前居なくてもいいぞ。帰って真夢看てやってたらどうだ?」
「そうそう、アンタなんて居なくてもだいじょーぶ。それよか真夢が心配だよ」
二人して悪態をつきつつも、俺と真夢を心配してくれているのが分かってありがたい。
「すまねえな、いらん心配させちまって。真夢は寝てるだろうし、俺がいてもいなくてもそれこそ変わんねえだろうからせめて自分の仕事くらいやるよ」
源三とミカが俺をじっと見る。
「何だよ」
 俺何か変な事言ったか?
「いや……三時間惚れた相手抱き潰すと、こうも達観するんだな」
「本当、弾のくせに生意気」
「そもそも仕事抜け出してそんな事してたんだしな?」
「このスケベ野郎」
「うるせえ!!何なんだお前ら!?まあ確かにそうだしな!!働きますよ!!」
ぷりぷりしながら持ち場に着こうとする俺を二人はニヤリと笑って見ていた。そして
「弾、おめっとさん!今度皆んなでメシ行こうぜ」
「本当!真夢もうんと祝ってやんなくちゃ!」
二人でそんな事を言ってくれる。
 嬉しい。涙が出ちまいそうだ。
それをグッと堪えて、
「ありがとよ!真夢も喜ぶぜ!」
そう言ってニッと笑ってやった。

 本当にこの日は暇だったのか、各自仕事は早めに終わった。その足で事務所に向かう。
「あれ?弾くん。こっちにも来てくれたの?連絡はくれてたから大丈夫なのに」
カンナが俺の姿を見て驚いている。
「ああ、一応直接も言いに来た。真夢のこと、すまなかったな」
カンナは少し顔を赤らめて笑顔で返す。
「ううん、大丈夫。病欠早退にしといたよ。真夢ちゃん真面目で有休もたまってたから丁度いいよ!」
「そっか……よかった」
ほっとして胸を撫で下ろす。カンナが周りを確認して小声で続けて言う。
「それで……真夢ちゃん、大丈夫??」
俺はちょっと考えて、そして答えた。
「ん……まあな。本当に全く動けないわけじゃないだろうけど、一応な……迷惑かけてすまなかった」
「弾くん、おめでとう!真夢ちゃんとお幸せに♡」
何か結婚したみてえな言い方だな……と内心盛大に浮かれつつ、ああ、とだけ返しておいた。
真夢のデスクに向かうと、綺麗に整頓されている。置かれた物やイスにかけてあるストールなど、所々に真夢がいる形跡が見られて何だかくすぐったい。こんくらいのことでニヤニヤしちまう俺はいよいよイカれちまっている。
頼まれていたメガネを手に取って事務所を出ようとするが、時間を見るとまだ退勤まで時間がある。
 盛大に中抜けしてあんなことして、現場終わったからって早々と帰るってどうなんだ。事務所の皆んなはまだ働いてるってのに……あ、じゃあ……
「おーい、カンナー、あのよ……」
俺は再びカンナに話しかけに真夢のデスクを立った。

◆◆◆◆◆◆

「やっべ、すっかり遅くなっちまった……!」
 時計は午後八時を指している。
 真夢はどうしているだろうか。
特に連絡がないし、帰るってメッセージも既読付いてないし、あれからずっと寝ちまってるんだろうか。しんどそうだったもんな、身体……
つまんねえと思いつつも無いよりはマシだと思い、弁当屋の弁当を適当に二つ買う。あいつ細いのにうまそーに何でもよく食うから俺と同じので大丈夫だろ。本当は手料理を振る舞ってやりてえが、時間が時間だしな……ただでさえそんな手際が良くねえのに時間がないのは更に良くねえからな。
早く真夢に会いたい気持ちを抑えて急いで家に帰る。ドアを開けると……
「ただいまー」
 ………
 しーんとしている。やっぱり寝ているんだろうか。
心のどこかで、あの可愛い声と笑顔の「おかえり〜♡」が無いことに寂しさを感じるが、それよりも心配の方が大きい。でも奥からテレビの音は何となく聞こえるから、いるにはいるんだろうなと思うと少しホッとする。
逸る気持ちと共にドタドタと廊下を歩き、
「おい、帰ったぞー。寝てんのかー?飯買って来たから一緒に……」
部屋に入ると、目の前には信じられない光景が広がっていた。
 テーブルの上には美味そうなパスタ、サラダ、スープがラップをかけて二人分並べてあり、そして、俺のTシャツ短パンを着た真夢がソファの上ですうすうと眠っている。
 つーか、家の前辺りで若干いい匂いがすんなとは思ってたけど、隣の家とかかと思ってた。さっきまでは心配で少しテンパってたし気付かなかった、でもこれ、ウチからの匂いだったのか……
 そんで。え?何これ?何この真夢??天使かよ?? いや、ヴィーナスってやつか???
あまりに可愛すぎて、震える手でつい写真を撮ってしまった。
 え?これ風呂入ったのかな、髪ストレートになってるし。メガネはないからコンタクト入れたまま……え??つうか、これ、もしかしてすっぴんってやつ?それでこんなに可愛いわけ??寝顔で???
 まじで女神じゃん!!俺の女神だよ!!!ここ本当に俺の部屋かよ!?!
興奮を何とか収めつつ、とりあえずスマホをポケットに入れて、荷物を床に置いて、真夢の頭を優しく撫でながら起こすことにした。
「真夢、おい真夢。こんなとこで寝たら風邪引くぞ」
「……ん……?弾くん……お帰りなさい……??あれ?私、寝ちゃってた……?」
俺の顔を見て目を擦りながらふにゃ、と笑う。ごめんね、とか言いながら。
 あああ〜〜クソ可愛いなあもう!!
「ああ、ただいま。ていうか、真夢……」
「ん……?」
真夢はまだぼんやりしてる。だから可愛過ぎんだって畜生。あまりの可愛さにそっちにばっか気を取られちまったが……
 夕飯、作ってくれてたのかよ。
しかも、何かスゲー美味そうなやつ……具がたくさん入ってて、到底俺には作れなさそうな、店で出てくるやつみたいだ。それだけじゃなくスープもサラダもあるなんて……あれ、でもウチにそんな材料あったっけか?
俺がそんな事を考えていると、真夢が床に置かれた荷物に気付く。
「あれ……?弾くん、夕飯買ってきてくれたの?」
「あ?ああ……そうだけど、いいよこれは」
「何で?まだあったかそうだし、それ一緒に食べようよ」
「バカ言え!!!お前が作ってくれた方食べるに決まってんだろ!!!」
「えっ、こっちはもう冷めちゃってるし、明日温めて食べてもいいのに。弾くん買ってくれた方まだ……」
「いいんだ!!弁当とお前の飯を天秤にかけんじゃねえ!!絶対こっち食うぞ!!」
何でかぷりぷりしてる俺を、真夢はキョトンとして見ている。
「あ、そう……分かった。ありがとう。……嬉しい」
何だこの可愛くて尊い生き物は。
「い、いや……大きな声出して悪かった。あっためてくるよ。それくらい俺がやる。お前は座ってろ。こっちの弁当こそ、明日食おうぜ!」
「うん」
真夢は目を細めて言う通り座っていてくれた。
「あ……そうだ真夢、今日は……その、すまなかったな……」
色々急で、と、レンジで温まるのを待ちながら、俺は照れ臭さを感じつつ真夢の方を向いて謝った。
「ううん、いいよ。私なら大丈夫。ちょっとしんどいけど、病気じゃないんだし。現場も事務所も、大丈夫だった?」
「おう、現場は本当に暇だった。勤務時間内に事務所行けたぜ。カンナにも伝えといたし、病欠にしてくれてたぜ。有休余ってるから丁度いいってさ、ちゃんと休めよ?」
「うん……じゃあこれからは弾くんが休めそうな時に使おうかな、有休」
そう言って照れたように笑う。何それ。俺の理性をこれ以上崩壊させないでほしいんだが。
「いや、いいんだよ!真夢は真面目過ぎるからな。もっと自分のために使えって」
「うーん、でも勿体無いもん。それに弾くんと一緒にいるのが何より自分のためなんだもん」
 だから何それ。可愛すぎて飛びかかってやりたい所にお馴染みの♩ティロリロ〜という音が響き、会話が途切れる。
「おっ、出来たみてえだな。よし、ありがたくいただきます!」
「はい、召し上がれ。いただきます!」
二人で手を合わせて食事を始める。
 ………。
 ………!!?
 やべえ、何だこれ。
 超っっっっっ絶うめえええぇ……!!!
「……うんっまぁ……何コレお前」
「えへへ〜、お気に召して頂けて良かった♡」
ドヤ顔の真夢。可愛すぎるわ。
「しかも割り箸で食うのが地味に感動すんだけど。フォークより食いやすいよな」
「でしょ!?私いつもそうなんだよね。コンビニでも割り箸もらうもん」
他愛のない話で笑い合う。そんなことが出来ることに、ものすごく感動を覚える。些細な共通点が嬉しい。
 やっぱり真夢といると楽しいし落ち着くけど、ドキドキもする。変な感じだな。でも、すっっげえ幸せ。
何よりもこうして真夢と食卓を囲むってことが最っっっ高に幸せだ。
「……でもよ、真夢。ウチにこんな材料あったか?パスタくらいは買い置きしてたかもしんねぇけど」
「あー……えと、」
真夢はちょっと言いづらそうにするが、すぐに正直に話してくれた。
「病欠になってるのに出かけるのはアレなんだけど、ほんの少しだけ、そこのコンビニにちゃちゃっと……買いに出ちゃった。会社近いのにダメだよね。一応勤務時間終わってから出たんだけど」
 何だよそれ。
「……俺のために?」
「え?あ……う、うん……ごめんね?」
申し訳なさそうに俯く。
「バカ野郎!!全然悪くなんかねえよ!!嬉しいよ!!マジで!!ああもうお前はどうしてそう……」
 ……俺のこと喜ばせてくれるんだよ。
「……身体、しんどかったろ?」
「んー、ちょっとだけね。でも大丈夫だよ」
俺が現場に戻ってから、しばらくは休んでいたそうだ。それからトイレに行くついでに、シャワーも浴びたらしい。それから少し部屋のものをつまんで食べ、そうこうしている間に退勤時間を回ったので買い物に出て夕飯を作ってくれていたらしい。そうして作り終えてテレビを見ながら俺を待つうち、眠ってしまったらしい。
「勝手に服借りちゃったり、もの食べちゃってごめんね」
「そんなんは全然いいよ。そうしろって言ったの俺だし。俺の服がこんなにエロくなるのには驚いたけどな」
「もう!!!」
真夢は顔を赤くしながら怒っている。
「それにしても……お前の作る飯って美味いな。すっげえ感動した」
「本当?やったあ。ありがとう」
嬉しそうに笑ってくれる。しつこいけど可愛い。
「でもな、真夢。無理はすんな。しんどい時までこんなにしてくれなくていい。無理すると続かねえし、お前に無理させたくねえ」
真夢の髪を撫でながら、俺は言う。
「う、うん……分かった。ごめんね」
真夢は俺の目を見つめながら素直に返事をしてくれる。こういうところが、本当に好きだ。
「別に謝んなくていいよ。すっっっげえ嬉しかったからな」
「今日くらいはね。ちょっと頑張ってでも、用意してみたかったんだよ」
でも結局寝ちゃっておかえり言えなかったね、と真夢は苦笑する。
「いや、俺こそ悪かったよ。遅くなったの俺だしな」
「あ、そうだよね。早く現場終わって事務所行ったにしては随分帰り遅かったね?まさか初日から浮気でも……?」
真夢がジト目で俺を見てくる。多分冗談で膨れてんだろうけど、それでもそれはヤキモチってやつなんだろうか……とか考えるとちょっとニヤけちまう。
 何だ?俺はもう運を使い切るのか??ふざけんな、まだまだこれからずっと真夢と生きてくんだっつーの!!
「……弾くん?」
ニヤつく俺に真夢が訝しげな顔になる。
「ああいや違うぞ!心配すんなって!!……実はな」
「……何?」
「……真夢の仕事を……少し、ほんっっとーに少しだけ、やらせてもらってた」
「え……」

 真夢のメガネを回収して家に帰ろうとした時。ふと思いついた。俺が少しでも真夢の仕事を手伝えばいいんじゃないかって。
「おーい、カンナー、あのよ」
「え?何?弾くん」
帰らないの?と聞くカンナに聞き返す。
「俺に出来る、真夢の仕事って……何かあったりするか?」
「え??」
「事務仕事なんてやったことねえ俺に出来ることなんて限られてるだろうけどよ。でも、少しでもアイツの仕事やっとけば、真夢も少しは後ろめたい気分が晴れるんじゃないかなって……思って……」
真面目な真夢のことだ。勢いであんなことになったはいいが、仕事場に戻らなかったことは気に病んでるはず。それを少しでも軽くしてやりたい。そうしたのは俺だから。周りの人にも申し訳ないし……まあそれも俺のやったことだけど。
そんなことを伝えると、カンナは
「えらいっ!!弾くん、えらいね!!」
と大声を張り上げた。
 びっくりしたぜ、コイツこんな大声出したりすんのな。
俺が驚いていると今度は小声で
「好きな女の子と結ばれちゃうと、こんなにも変わるんだねぇ……」
と感心していた。
 それ、さっき現場で源三とミカにも言われたような……、そんでカンナも含めて全員俺より年下だけどな!?まあそれは構わねえけど。
「でもねえ……真夢ちゃんて、本当仕事出来る人だから、本当に弾くんが出来ることはあんまりない……かも……?」
「そうなのかよ。同じ事務のカンナから見てもそうならすげえなあ。真夢そんなこと言わないのに」
「そんなの、私仕事できまーす!なんて言わないでしょ!そういうのも含めて、まだ鬼頭組や黒木組からの再オファーが止まないんだよ。しっかり捕まえとかないとね!?」
そう言ってカンナは悪戯っぽく笑う。こういうところは少し真夢と似ている気がする。とはいえ、俺がときめくのは真夢ただ一人だけどな!
「おう、そうだな!じゃあ、アイツが出来ねえようなこととか。書類の整理とか、力仕事とかあるならやるぜ?」
「あ、本当!?それ助かるかも……!あとは何だろ、データ入力は真夢ちゃん得意だしやり方あるだろうし……テンキーの鬼だからね」
「鬼!?」
「そう、鬼。たまに話しかけても気付かないほど集中してる時あるでしょ?」
 ああ、確かに。事務所仕事の日や立ち寄った時、顰めっ面で画面をぶつぶつ言いながら見てカタカタ打ってる時がある。それを言ったら真夢は恥ずかしがって嫌がっていたが、それほど真剣に仕事をしている姿は煌めいていてそれはとても素敵だった。
「じゃ、やれることをやってみようか!」
「お願いします」
そして俺はカンナに仕事を教わりつつ、真夢のサポートを始めた。
 そしたら、これが難しいのなんの。
コピーしたらズレるわ、ホチキスしてもズレるわ、電話も上手いこと要領よく内容伝えきれねえし、入力作業してみてもちっとも進まねえで日が暮れるかと思うし、実際暮れちまった。力仕事は流石に女より捗ったが、他の事務仕事についてはからっきしだった。
普段、気にも留めてなかった、綺麗に整理されている書類や、コピーされている図面、ズレなく留められているそれら。電話で取り継がれる正確な内容。色んな事のありがたみを知った。

「ほんっと、何も出来なかったよ、俺。その上こんな時間になっちまって。むしろ引っ掻き回してやりづらくしてたらごめんな」
「そうだったんだ……そう、だったの……」
真夢はそう呟くと、しばらく俯いて。
「ん?どした?」
声をかけると、ちょこちょこと猫のように歩いてきて、俺の胸の中に飛び込んできた。
「お、おい……」
俺が戸惑っていると、そのまま真夢は俺を見上げて、ぎゅうと抱きついてきた。
「ありがとう」
「え?」
「嬉しい。すごく。……大好きだよ、弾くん」
真夢は涙ぐんで俺に頬擦りして、それから俺を見つめながら優しく微笑む。
俺は真夢の頭を撫でて、抱きしめて、口づけをする。
「……んっ……」
真夢が甘い吐息を漏らす。その声に興奮を覚えつつも、俺はゆっくりと唇を離す。
「だからな。俺は何も出来なかったんだっつの」
「そんなことない。そうしようとしてくれたことが、それだけでも嬉しい……んん」
再び真夢を抱き寄せて、またキスをした。今度は舌を入れて、お互いの唾液を交換し合うように激しく絡め合って、真夢を求める。
「ん……ちゅ……れろ……弾くん……もっとぉ……♡」
いつの間にか真夢の方からも求めてきて、俺達はリビングで絡み合いかけるが……
「だあっ!!だからダメだっつの!!」
慌てて真夢を引き剥がす。危ない、今完全に理性ぶっ飛んでたぞ……。
「もう……いいじゃない……?続き……シよ……?」
「だからダメだって!お前今日無理して料理作ってくれたり、疲れてんだろ?だから……これ以上は、な?」
「昼間したらもういいの……?もう私は用無し……?」
なんて言ってさめざめと嘘泣きしてる。
「んな訳ねえだろ!!今すぐぶち込みてえわ!!」
「あはは、嘘嘘。ごめんね、ありがとう弾くん」
そう言ってぎゅうと抱きついてくる。もう本当勘弁してくれよ。
「あ!じゃあこれの出番?」
まくちゃん(仮)を手に笑顔で聞いてくる。
「何でだよ!?お前が回復したら抱き潰すから覚悟しとけ!!」
「きゃあ!!こわーい!」
なんてふざけて笑ってるが、多分本心では怖くなんかないだろう。
「……でも、本当に嬉しかったんだよ。私の仕事のこと、考えてくれてるんだなって」
「当たり前だろ」
話しながら真夢は食卓を片付けようと立ち上がるが、それを制止する。
「何?」
「何?じゃねえ!後片付け位俺がやる」
「いいのに、私がやる……」
「今は休むのがお前の仕事!……俺に出来ることはやらせろよ。俺にはこんな美味い飯作れねえ」
それを聞いた真夢は目を丸くして、その後ふわっと笑って。またがばっ!!と抱きついて俺にエロいキスをしてくる。
「んんっ!??」
「ぷはっ、んふふ、弾くん、だいすきぃ……♡」
 コンニャロー〜……死ぬほど可愛いじゃねえか!これ以上俺を煽ってくんのやめてくれ!!必死に耐えてんだからよこれでも!!
俺が真夢に萌えている間に、真夢は食器を片し始めちまったので慌てて引き継ぐ。シンクで洗いながら、ふとある事を思い付く。
「なあ、真夢。風呂入ったんだよな?」
「え?うん、シャワーだけだけど、借りちゃった」
「じゃあさ……」
食器を洗い終え、リビングに向かい、真夢の横に座る。
「風呂、一緒に入ろう♡」
「えええ!!?」
真夢の驚いた声が部屋に響き渡る。
「そそそんなの、恥ずかしいよぉ……」
顔を真っ赤にして俯きながら抗議している。まあ、わからなくもない。でも……
「真昼間の明るいこの部屋で、もっと恥ずかしいことしたのに……?」
真夢の顔を見ながらニヤリと笑う。すると、みるみると顔が紅潮していき、やがて茹で蛸のように耳まで真っ赤になった。
「あう……そ、それはぁ……」
「そんなに嫌なのかよ、俺と風呂入るの……泣いちゃうぞ」
わざとらしく落ち込んで見せる。
「そ、そんなことないよ……!もう、わかったよお」
「そうか、なら良かった」
そう言ってニカッと笑う俺を、恨めしげに睨みつける真夢。
「……いじわる」
「そりゃ、好きな女と入りたいと思うのは当然だろ?」
そう言うと真夢は更に顔を赤くして、俺の胸にぽすんと頭を埋めてくる。
「……ずるい人」
「はあ!?お前だけには言われたくねえよ!?」
何それ!?と真夢は笑いながら、二人で懲りずに抱き合って戯れている。
「じゃあさ、お湯に浸かりたい」
「ああいいぜ。結構俺シャワーだけで済ませちまう事多いけどな」
「実はね……んふふ、こんなのも買ってきちゃったんだ」
と言って真夢は買い物袋から何かを取り出した。
「何だこれ……入浴剤?」
「そ、ちょっといいやつ。贅沢にコンビニで一回分だけ」
ふふっと頬を赤らめて笑う真夢はまた女神降臨級の可愛さだが、あれ?でもそれって……
「もしかして……元々一緒に入ろうって思ってくれて……たり……?」
様子を伺いながら聞いてみると、真夢は少し黙った後、こくりと小さく首を縦に振った。
「マジか……!!すげえ嬉しい……!!」
俺は感極まって真夢を抱き寄せる。
「嬉しい……の?」
「当たり前だろ!……すっっっっっっっっっげえ嬉しい!!」
「……そっか、よかった」
そう言って真夢も俺の背中に手を回して抱きしめ返してくれる。
 ああ、こんなことばっかしてるとまた股間に血が巡って……真夢の前では豆乳並の理性と決心が液状化していく……だがダメだ!!今日はイチャつく以上のことはしないって決めたんだ!!
俺が一人で色々戦っているのを知ってか知らずか、真夢は
「じゃあ、私先に入って行ってもいい?さっきざっとしか入ってないから、多分弾くんと一緒にスタートしたら弾くんのぼせちゃうから。呼んだら来てくれる?」
「わかった。じゃあお湯溜めてくるぜ〜♡」
「うん、お願いね。待ってるから」
程なくして湯が沸き、真夢は脱衣所に向かう。
残された俺は一人、リビングで待つ。
 何だ、この異様な緊張感は。
さっき自分で言った通り、もっと明るい部屋でセックスしたっていうのに、自分で望んだのにいざとなると風呂がこんなにドキドキするなんて……! しかも、あの真夢が俺の為に準備してくれた入浴剤付きだ。
風呂場の方からジャーとシャワーの音が聞こえてきた。あの扉の向こうで真夢が裸でいるのか……。
そう思うと俺の息子はもうビンビンに……
「おいこら俺のマイサン!頼むから今は大人しくしててくれ!」
俺の祈りが届いたかどうかは知らないが、しばらくして真夢が俺を呼ぶ。
 どうなんだコレ、ギリギリ通常時に戻ったって言えるか!?
「弾くーん、いいよ〜」
真夢の声で我に帰る。
 危ねえ……危うく俺のマイサンが暴発するところだった。
「お、おう!今行く〜!」
平静を装って返事をして、急いで服を脱ぎ捨て浴室に入る。やや前屈みで下腹部を隠し気味にしながら。
「どしたの?お腹痛いの?」
真夢は俺の様子を見て心配そうに声を掛けてきたが、お前のせいだよとは言えず、
「いや何でもねえよ。ただの思春期の男の子のアレだから気にすんな」
「え?それってどういう……」
「いいんだよ!!ほれ、俺も風呂入るぞ風呂!!」
強引に話を逸らすと今までテンパっててあまり目に入れてなかった湯船に浸かっている真夢がダイレクトに視覚にインしてくる。
 何てこった……
……おっぱいが……
デッカくて柔らけえ真夢のおっぱいが湯に浮いてる!!!
「ぐああああああ……!」
「え!?やっぱり痛いの!?」
「いや違う、大丈夫だから……」
慌てて真夢に背を向け気味に腰掛ける。
「あ、あんまり見ないで……」
「え!?いや、見てないよ!?ていうか、あまり見えない」
「え?」
「コンタクト、今度こそ外しちゃったの。だから、ぼや〜としか見えてなくて……」
 よっしゃ!!!助かった!!なら大丈夫だな!!?
安心して洗い出そうとすると、真夢が声をかけてきた。
「でも……弾くん……何となくフォルムでわかる……ような……ソレ……」
その視線は俺の下腹部の方へ向いていて、顔も風呂のせいなのかと思いたいが赤らんでいる。
「あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺はまたも叫びながら、またも自分の息子と闘う羽目になった。
「だ、騙したな!?見えてんじゃねーか!!」
「し、しっかりくっきりとは見えてないよ!!ご、ごめん、騙したつもりは……」
二人して真っ赤になってあたふたする。
「うう……カッコ悪ぃ……」
半べそでシャワーを浴び始めた俺に、真夢は優しく語りかけてくる。
「そんなことない。……すごく、嬉しいよ」
そう言いながら真夢は湯船から手を出して、俺の背後を撫でてくる。
「わっ!?……ちょ、お前……」
「私でそうなってくれるなんて、嬉しい。カッコいいよ」
「……お前、この上射精までさせたいわけ?」
「ええ!?」
今度は真夢が顔を赤くしている。
「そ、それにさ……弾くんは、目いいよね?なら、私の姿はくっきり見えてるんでしょ?」
「ああ、くっきりハッキリ見えてるぜ。湯に浮かぶお前のデカくてエロいおっぱいもな」
「ええええええ!!?」
真夢は更に顔全体を紅潮させて、胸元を隠しちまった。
「隠すなよ!見えねえだろ!?」
「何それ!?見られて恥ずかしいから隠したんだよ!?」
「俺は見たい!!……綺麗なんだから、隠すなよ」
「! ……弾くん」
真夢は赤い顔をしつつも、手をそっと下ろした。
「もう、のぼせさせないで?一緒に温まれなくなるでしょ」
「そりゃ大ごとだ、わかったよ。俺も早く洗っちまおう」
一緒に湯船に浸かれなくなったら楽しみが減っちまう。俺は丁寧に洗いつつもスピードをアップさせた。
真夢はあんまりジロジロ見ないでね、と言って湯船のヘリに座ってのぼせないよう待っていてくれる。
 わかった、そう返事はしたものの、うん、まあ、見るだろうな。
 だってさっきチラ見したら、乳首が綺麗なピンク色でめっちゃ可愛かったんだもん。湯船で温められてちょっとぷっくりしてきたみたいだし。
 やべえ、めっちゃ触りたいししゃぶりたいんだけど。
 背中なんかはすげえ白くてツヤツヤしてて、齧り付きたい……ああそんなこと考えてたらまた反抗的なコイツが……
そうこう考えているうちに全身洗い終わった。反抗期の息子も少しリラックスしたようだ。
「待たせたな。さ、入ろうぜ」
「あ、うん!じゃあ、コレも入れてみよう」
そう言って真夢は買ってきた入浴剤を湯に入れる。と、途端にいい香りが風呂場に広がった。
「お〜、これは……いい匂いだな」
「うん、アロマ系の入浴剤。気持ちいいね。お湯もちょっとトロッとするみたい」
「へえ?あ、本当だ、気持ちそんな感じするかも」
「でしょう?私、これ好きかも」
二人で入浴剤を楽しんでいるが、今はせっまい浴槽に二人無理矢理並んで浸かっている。
「……狭くないか?もうちょっとこっち行こうか」
「ううん、いいよここで。狭い方が……くっついていられるから」
そう言うと真夢は俺の肩に頭を預けてきた。
「お、おい……!」
「いいでしょ?」
 ダメなわけねえだろ!!可愛い声で可愛いこと言って可愛いことしやがって!!!
「いいけど、お前俺のこと試してんのか?」
「え?どういう意味?」
「このままだと俺、お前の身体に手が伸びると思うぞ?」
すると真夢はクスッと笑って言った。
「それは、困るかな?」
「なっ……!」
全くコイツはよ。俺を煽ってんのか。
「わかったよ……善処するから、こっち来い」
「え?」
「俺の前に来て座れよ。その方がもっとくっつけるぞ」
「ええ!?!?」
「ほら、早くしろよ」
「ええと……」
「ほら」
半ば強引に、俺は真夢を自分の前に座らせた。
「……ちょっと、恥ずかしい……」
「いいじゃん、風呂の中だしさ」
後ろから真夢を抱き締めてみる。
「……やっぱ、温かいな」
「……そうだね」
「……やらけー……」
「こらぁ」
真夢は少しだけ振り返ると、口を尖らせて抗議してくる。
俺はそれを見逃さず、すかさずキスをした。
「ん……」
最初は軽く唇を重ねるだけだったが、すぐに舌を入れていく。
「ちゅぷ……んふぅ……」
お互いの唾液を交換し合うように絡ませ合いながら、俺は真夢の胸元に手を伸ばした。
柔らかくて張りのある胸の感触に酔いしれる。
「はぁ……♡……あん……」
真夢は俺の手の動きに合わせて、小さく喘ぎ声を漏らしている。
そのままゆっくりと胸を揉みしだいていると、真夢が物申してくる。
「弾くん……何かゴリゴリしたのが当たってるんですけど」
「気のせいじゃねえ?」
「そうかなあ……」
手を後ろに伸ばして反抗期のマイサンをキュッと優しく握られると、それだけで暴発しそうになる。
「ぐおお……すんません、当たってました……勃ってました……でも我慢してます許してやって下さい……!」
「んふふっ!なら、いいよぉ!」
そう言って真夢は俺に体重を預けて見上げてくる。
 何だ?100回キスすればいいんか!?
「お湯、トロトロしてるから、肌が触れ合うとすごく気持ちいいよね……」
真夢が俺の手を自分の胸に誘って包み込ませる。
 うおおおおおどうした!!?急な特大ビッグボーナス到来ですか!?
「……真夢」
俺はありがたくその手を優しく動かし真夢の大きくて柔らかい胸をゆっくりと堪能させてもらう。
「……弾くん、私の胸、好き?」
「ああ、好きだ」
「良かった。私も……大好き」
「……え?俺の胸ってことか?」
「うん、そう。弾くんのこの胸、ずっと触りたかった。このカッコいい胸に、ずっと抱かれたかったの……」
真夢はそう言いながら、後ろ手に俺の胸を撫で始める。
「ちょ、お前……どこでそんなテク覚えてきやがったんだ?」
「え?テクニック?別に何も……。ただ、弾くんに喜んでもらいたいなって思って」
そう言うと真夢は振り返ってゆっくり抱きついて来る。
「弾くん……好き。大好きなの。ずっと好きだったの。今でも信じられない、昼のことも、今も……」
そう言うと真夢はまたキスをして来た。今度は先程よりも深く長く。そして舌を差し入れて来た。
「ん……ふぅ……はむ……んちゅ……れろ……」
俺も負けじと舌を動かして絡めて行く。真夢もそれに応えてくれる。二人共息継ぎをする余裕もなく、どんどん口付けは激しくなっていく。
やがて真夢が苦しそうな表情を浮かべ始めたため、名残惜しいが一旦口を離す。
しかし真夢はすぐにまた顔を近づけてきて、俺の首筋に吸い付いてきた。
「……あっ……」
思わず声が出ちまう。首筋が弱いことを真夢に悟られてしまったらしい。嬉しそうにこちらを見ている……この小悪魔がよ!!
その後真夢は何度も何度も同じ場所を舐めてきた。
俺は堪らず真夢の頭を押さえつける。すると真夢はやっと顔を上げて、少し怒ったような口調で言う。
「……だめだよ、跡ついちゃうよ?」
「つけて欲しい」
「ええ!?」
「いいよ、つけてくれよ。俺に、跡を」
「……いいの?」
「ああ、むしろ頼むよ」
そう言うと真夢は嬉しそうに微笑んで、強く俺を抱き締めてきた。
「嬉しい……ありがとう、弾くん……!」
そして真夢はあちこちに可愛い所有欲の痕を付けていく。意外とこういう所は積極的っていうか肉食系なんだな。
俺はそれが嬉しくて、真夢を強く抱き締め返す。
「真夢……」
「んっ……」
俺は真夢の耳元まで唇を寄せて囁くように言った。
「俺だって、真夢のことずっとずっと、ずっと好きだった。引くくらい惚れてる。だから俺だって信じらんねえよ。でも……全部本当だろ?」
「弾くん……」
真夢は潤んだ瞳で俺を見つめる。堪らねえ、ホントマジでどうしようもなく惚れまくってるよ!!
「昼、俺たちはセックスしたよな……?」
「うん……」
「今もこうして一緒に風呂入ってる」
「うん……!」
「ずっと一緒だよな?真夢……!」
「弾くん!!」
真夢はもう一度俺にギュッとしがみつく。それを俺も更に強くギュッと抱きしめる。
「もちろん……ずっと、ず〜っと、一緒だよ!これからも、ずっと……!」
「おう!約束だぞ!つーか、離してなんてやんねえから、覚悟しろよ!?」
「うん!望むところ……ふあぁ、あつい……!」
真夢も俺ものぼせそうになってしまった。
「風呂でいちゃつき過ぎたな。倒れちまう、上がろうぜ!」
「あはは!そうだね!」
俺と真夢は寄り添って風呂から上がった。