今年欲しいもの

「真夢、クリスマスプレゼント何がいい?」
 弾は真夢に尋ねる。
「いらない。私は弾くんと一緒にいられるだけで幸せだよ」
 真夢は弾に微笑みかける。
「そんなん、俺だってそうだぜ」
弾もまた、真夢に微笑み返す。
「……えへへっ」
「ははっ」
見つめ合う二人。その甘い雰囲気は周りをも幸せにしそうなほどである。
「でもな。俺はやっぱり毎年ちょっとしたモンでもプレゼントしてやりてえんだよ。特に今年は……」
そこまで言って弾は言葉に詰まる。困惑で詰まったのではなく、幸せを噛み締めるような照れ笑い。
「お前が、俺の嫁さんになってくれた最初のクリスマスなんだからよ」
「弾くん……!」
真夢は感極まったのか、弾の胸元に飛び込んでいった。
「……おお」
突然の抱擁に驚く弾ではあったが、すぐに微笑んで真夢の身体を抱きしめる。
「コラ、あぶねえじゃねえか。嬉しいけどよ」
「へへ、ごめんね。でも、私のプレゼントなんていらないよ……だって今が一番幸せだもん……」
「……真夢」
「だからこれ以上なんて望まなくても大丈夫……私の願いを全部叶えるのはやっぱり弾くんだけなんだよ……?」
「……ありがとな」
そしてキス。それはクリスマスという日がもたらす……と言いたいところだが、この二人はいつだってイベント据え置きで激甘なのだ。
加えて今年は弾の言う通り、二人が夫婦となって初めてのクリスマス。二人の幸せ指数は限界突破していた。
「ったく、お前ってやつはよ……これ以上惚れさせてどうするつもりなんだ?」
「どうもしないよ。一生離さないだけ」
「俺のセリフだばかやろ〜♡」
「きゃー♡」
そうしてイチャイチャチュッチュしだす二人。少し経ってから真夢はようやく弾から離れる。
「あ」
「なんだ?」
真夢が話題を変えようとしてきたので、弾も正気に戻る。
「プレゼントの話なんだけどね……」
「おっ!何だ、思いついたか!?いいぜ、何でも言ってくれ!俺にできる範囲でなら何でも頑張るから!」
プレゼントをあげる側の弾の方が嬉しそうで、もらう側の真夢の方が申し訳なさそうにしているのが実に彼ららしい。
「えっと……じゃあね……」
「おう!」
「……スニーカーが欲しいな」
「え?スニーカー?」
真夢の意外なリクエストにキョトンとする弾。
「うん」
「そんなもん、いくらでも買ってやるぞ?むしろもっと高いもんでも……」
真夢がおねだりしてきたのがスニーカーとは意外で、弾は少し驚いたが特にそれで何かが変わるわけではない。彼にとっては真夢はいつだってお姫様なのだ。
「えっとね、こう、スニーカーでもちょっといいやつ……底がペラペラしてないちゃんとしたやつが欲しいんだけど……」
「ブランドとかプレミアもんか?それだとちょっとしんどいかもだけど……でもまあ頑張るぜ!」
「違うよ!!『N』とかがついてても、普通のやつだよ〜」
ちょっといいスニーカーの申し出に、弾は少しビビったようだが、プレミアや限定モノではないらしく少しホッとする。
「とはいえ一万円超えちゃうかもだけど……」
「何だよ、そんなもんか。全然いいぜ。ていうかいいのか?アクセサリーとかじゃなくて」
真夢はいつもプレゼントを聞かれると香水やアクセサリーをリクエストすることが多い。しかし今回はスニーカー。
「うん、スニーカーがいいな。私が持ってるのは安いのが多いからちゃんとしたの欲しくて」
「まあ数十万の限定モノじゃなくていいならいくらでも買うけどさ」
「うん!ありがとう!」
真夢は嬉しそうに弾に身を預ける。
「ちゃんとね。安心して歩ける靴が欲しかったんだ」
「真夢……そっか」
弾はそんな真夢の頭を撫でる。
「そうだな。二足くらい買うか」
「いいよ、一足で!」
「ははっ。じゃあ、お前とこいつに一足ずつ、って事でよ」
そう言って弾は真夢のお腹を撫でる。
だいぶ目立つように出てきている真夢のお腹、そこには新たな生命が宿っている。
「俺が先に気付いてプレゼントしてやるべきだったな、悪かった」
「そんなこと……!」
弾は真夢に優しく笑いかける。その笑顔には心からの愛と幸せが感じられる。
「サイズもデザインもあるから一緒に買いに行くか!」
「うん!」
真夢も満面の笑みで応えた。その目尻には嬉し涙が光っている。
そして二人はもう一度、口付けを交わす。
「……欲情しないようにスキンシップを図るのも難しいもんだぜ」
「もう!弾くんたら」
キスを終えると、弾は真夢から身体を離して立ち上がる。真夢もそれに続いた。
「とりあえず飯にするか」
「うん!」
 
 弾と真夢の夫婦生活は幸せそのものだ。互いの想いが通じ合っている二人にとって、クリスマスはただのイベントで。特別な事など何もいらないのだ。
このクリスマスの夜のように、二人にとってはいつだって愛に溢れた生活が待っているのだから。

 翌日、結局弾は真夢に内緒でピアスも用意して真夢を驚かせた。
「ダメじゃない、こんな無駄遣いして」
「お前へのプレゼントは無駄遣いじゃねえ!それに安心しろ、しっかり安モンだから」
そう言って明るく笑う夫を見て、真夢もつい笑ってしまう。
「ありがとう」
「おう!」
「うん、おうちゃんも喜んでる」
「おっ!本当か!?」
妻のお腹に手を当てると、中で赤ちゃんがもにょもにょと動いているのが分かり、弾は嬉しそうに目を細めた。
「私からのプレゼントは決まった?」
「ん?んー、じゃあ美味いもんまた作ってくれ!俺の好きなメシ!」
「またそれ!?そんなのいつだって作るのに……」
「俺はマジで物欲がそんなねえから。コレ!っての今は本当にねえから、お前の作るご飯がいいんだよ!」
「はーーー、私の旦那さんってスパダリだったのかぁ……」
「何だそれ?美味いのか?」
「料理名じゃないよ!もう……好き!」
「うん?俺なんて愛してるぜえ〜、概念イチな!」
 こうして二人は幸せそうに笑ってクリスマスを過ごしたのだった。

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