「おい真夢、起きろって」
ぺちぺちと真夢の頬を軽く叩く。だが目を覚ます様子はない。
それどころか、真夢はすうすうと寝息を立てている。
「参ったな、おい真夢」
肩をとんとん、頬をつんつんしてみるが反応は同じだった。
よほど疲れていたのだろうが、このまま放っておくわけにもいかない。じき勤務時間が始まっちまう。
昼休み。飯を食ってすぐ真夢は休憩室で寝ちまった。どうやらここ最近の激務で疲労が溜まった週末、昼に寝ないとやってられなくなったらしい。
どうしても起きられそうにないから、休みが終わる前に誰か起こしに来て、と真夢に頼まれた俺たちだったが、皆んなから『弾が起こしにいってやれ』と言われて俺が来たわけなんだが……
起っきねえな。結構頑張って起こしても、真夢は気持ち良さそうに眠っている。余程疲れているのだろう、起こすのが忍びなくなる。
しかし、寝ててこんだけ可愛いのかよ。自慢の美肌がツヤツヤしてて、唇もうるうるしてて……
俺は少しイタズラしたくなった。
真夢のほっぺを人差し指で突っついてみた。ぷにっとした感触が伝わってくる。おー柔らかい。
そのまま指先で頬をぐりぐりしてやった。それでも起きる気配がない。こりゃ相当だ。
今度は耳元に顔を近づける。すやすや眠る真夢の吐息を感じる。
「おい真夢」
囁くように言うと、ぴくりと身体を震わせた。それからまたすぐに穏やかな呼吸に戻る。
その様子が面白くて、もう一度やってみることにした。
「真夢ってば、おい」
するとまた同じように反応する。面白い。
「起きないとキスするぞ」
言ってみたものの、もちろんそんな度胸なんてある訳ねえ。もちろん真夢も眠ったままだ。
こんな、寝ててもツヤツヤしてる唇に、自分のものを重ねる勇気なんて俺には……
「………っ」
……あった。
ほんの数秒触れ合うだけの軽いものだったけど、確かに俺の唇は真夢のそれに重なっていた。
そしてゆっくりと離れていく。真夢はまだ目を閉じたままだ。
まだドキドキしている心臓を落ち着かせようと深呼吸をする。すると真夢の匂いが鼻腔を通り抜けた。
香水なのか柔軟剤なのか、はたまたシャンプーなのか、もしかして自前なのかわかんねえが、俺を虜にさせる甘い香りに頭がくらくらする。これはまずいな……もっとしていたくなる。
しかしこれ以上はまずい。一回だってまずいんだ。寝てる相手にキスするなんて、強姦みてえなもんだろ?
「……んぅ」
そんなことを考えているのに、唇は再び真夢の唇の上に重ねられていた。しかも今度は数秒間。
名残惜しむように離れた後、真夢の顔を見ると彼女は変わらず穏やかに寝息を立てていた。
「おい、これで最後だぞ。起きろ真夢、起きろって」
頭を撫でて、頬をぺちぺちむにむに、肩を軽くゆすってみても、真夢は身じろぐだけで起きてくれない。
ソファに降りたたまって半身だけ寝ている真夢だが、そんな体勢をとっていても分かるくらい大きくて形のいい胸が、俺の目の前にあった。
「もう知らね……」
最後に一度だけ、と自分に言い聞かせながら、俺は吸い込まれるようにして再び真夢に口づけをした。
触れるだけじゃない。舌まで入れてやる。
眠っているせいか抵抗はなく、簡単に真夢の中に入ることができた。
歯茎の裏から上顎にかけてゆっくりなぞっていく。舌先が彼女のそれと絡まり、互いの唾液が混ざり合った。
静かな休憩室に響く卑猥な音。それがより一層興奮を煽ってくる。
真夢、俺さ。ずっっっと、お前の事が好きなんだよ。
まだそれさえ伝えられていないのに、俺はこうして何度も何度も、寝ている彼女を犯しているのだ。
最低だと分かっていながらも、止められなかった。
だからせめて、今だけは俺の彼女であってくれよ……
真夢は相変わらず寝ている。でも俺の腰に手を回してきた。無意識のうちに抱きついてきたのだろうか。どんな夢見てんだよ。好きな男の夢でも見てんのか?
気づくと、俺は唇を離し、代わりに右手を真夢の左胸に置いていた。
柔らかくて弾力があって温かい。手のひらから伝わる鼓動が、真夢が生きていることを証明してくれているようで、妙に安心した。
このままずっとこうしていたい。でもそんなわけにはいかない。手を離さねえと。頭と理性はそう言ってるのに、右手に力が入ると、真夢の柔らかな胸が俺の手に合わせて形を変えていった。
「………っく!!」
あぶね。本当に。声も精液も出そうだった。何やってんだ俺は。ダメだ。ダメだって!
股間は痛いほど張り詰めていて、先走り汁で下着の中が濡れているのが分かった。こんな状態で真夢に触れ続けるなんて無理だ。早く離れないと。
なのに俺は、真夢の胸に手を置いたまま動けずにいる。
もう少しだけなら……。最低だと思いながら、真夢が起きない程度に、胸を揉み続ける。
むに、もに、ふにゅん。マシュマロみたいな柔らかい感触が気持ち良くて、手が勝手に動いてしまう。
決死の思いで手を胸から離す。本当にこれで最後だと心に決めて、もう一度だけ、真夢の甘い唇にキスをする。
ちゅ、という小さな音さえしないよう、唇を密着させる。
好きなんだ。真夢。お前のことが。本当に、死ぬほど惚れてんだよ。
密着させた唇を開いてしまう。そしてまた真夢の中に入っていく。
にゅく、ちゅっ、ちゅく、ぴちゅ、にゅぐ、れる、れちゅ……
俺の吐息といやらしすぎるキスの音だけが休憩室に響く。
好きだ。本当に。もっと欲しい。
股間も……擦りてえ。もう限界パツパツまで勃起してる。つーか、このまま、あとちょっとキスし続けたらもう俺は……あ、やべ、もう……!!
「……っはぁ!!」
素早く唇を離すと、その場にドサッと座り込む。
「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
やっべ、マジでギリギリだった。あと一秒でもキスしてたら、本当に出ちまってた。股間は相変わらず臨界ギリギリのバキバキに勃起しまくっているが、すんでのところで先走りで止まっている。
ふーっ、ふーっ、と静かに深呼吸を繰り返し、何とか収めようとする。そんなことで収まることなんて無いとわかるくらい、俺のものはパンパンに膨らんだままだ。
色んな気持ちが入り混じる中、真夢の方を振り返ると、さっきまでと同じ、上半身だけをソファに横たわらせたまま……ぱっちりと目が開いてる。そして、その大きくて可愛い瞳が俺の目とばっちり合っている。
「うわっっっっ!!?」
俺はそのまま飛び上がってその場に尻餅をついた。
「まっ、真くっ、え!?起き……いつから……!?」
もう現行犯確定な位キョドって、どもって、噛みまくる。
真夢は俺をじーーっと見ている。さっきまでキスしまくってた唇が動く。やべ、それだけで勃ちそう……つーか、まだ収まってねえのに……!
「いつから起きてたと思う?」
「え?いや……えっと……」
「当ててみて」
「い、いや、全然分かんねえけど、あ、今か?ほら、真夢って意外に寝起き悪そうだし……さ……」
「違うよ」
そうであって欲しいと思ったのに即答された。
「じゃ、いつ……」
「答えはね……」
まさか、……まさか……ドクンドクンと心臓の音が五月蝿え。そして同じリズムで股間にも血が巡っているのがわかる。
「最初から」
ズキンッッッッ!!!!
痛いくらいに心臓が跳ね上がった。
「最初……?俺がこの部屋に入ってきたときから、か?そんなに前から……」
じゃあ……え?それなら、何で……
「そう。それでね、今こうして……」
真夢がゆっくりと身体を起こす。
「弾くんに、されるがままになってたの」
俺を見つめてくる真夢の顔は、今まで見たことがないくらい妖艶な表情をしていた。
「そ、それ……どういう意味だよ……?俺が何するか、分かっててわざと寝てたフリしてのか?それともただ単に寝惚けてて気づかなかったのか?どっちなんだ?」
自分でも責任転嫁も甚だしいし、訳わかんねえこと言ってると思う。でも、何で真夢がそんな事……
「あのさ」
真夢が少し泣きそうな顔になり、俺は胸がズキンと痛む。
「私が、他の人にでも同じようにしてたと思う?」
「え……?」
「源さんとか、他の男の人が入ってきて、起きてって頬叩かれたり、体ゆすってもらって。私、寝起き悪いけど、流石に休憩室での仮眠なら気付くよ」
はっ、はあっ、呼吸が荒くなる。全身の血が逆流してるんじゃねえかって位に熱くて痛い。
「もし仮に起きなかったとしても、こんな風にされて抵抗しないわけないじゃん。なのに私は、ずっとされるがままでいたんだよ?」
キスも、胸も……と言って、真夢は唇をちょっと噛んで胸を手で隠すように寄せる。
「じゃあ、どうして……」
頭が混乱する。
「逆だったら、って考えてみて。それとも……弾くんは雰囲気に飲まれただけ?誰が寝てても、どの女の子にも同じ……」
「違えよ!!!!」
反射的に大声が出てしまう。
「違ぇに決まってんだろ!お前だからこうしたんだよ!お前以外にこんな風にするわけねえだろ!」
もうここまで来たら全部ぶちまけるしかない。
「お前が……真夢が好きなんだよ……!」
言ってしまった。
「……それ、いつも言ってくれてるやつ?友達の好き?」
「違うよ……俺は……」
真夢に近づいて、顔も近づけて。
「ずっと、恋愛の好きだって、いつもそう言ってたつもりだ」
真夢は俺の顔をじっと見て。ゆっくりと抱きついてきた。
「真く……!」
「責任とって」
耳元で囁かれる。
「え、あ、……?」
俺は恐る恐る手を背中に回した。
「私のこと、こんなにした、責任……とって……」
真夢は真っ赤になって涙ぐみながら、両足を開いてその間に俺を座らせるような姿勢で、俺の股間に自分の股間を押し付けるように密着させた。
「………っっ!!!」
はーっ、はーっと呼吸の音が自分でも煩く感じる。俺、まだ全然収まってねえんだよ。まだガチガチのパツパツのままなんだよ。真夢は………
にちゅ……擦れ合った所から微かな水音が聞こえた気がした。
俺は恐る恐る真夢の腰をぎゅっと掴み、お互いの股間がもっと擦れ合うようにする。
「……ぅ……っく!!」
先走り汁と下着でぬるっと滑った瞬間、思わず出そうになった声と精液を必死で堪える。やべ、これ、気持ち良すぎ……。
耳のすぐそばで真夢の甘い吐息が聞こえる。俺は真夢の肩を掴み、真夢の身体を少し離すと、その可愛い唇にむしゃぶりついた。
ねちゅ、にゅち、ねろねろとタガが外れたように、許可もないのに自分の女かのように唇をしゃぶり、舐め取り、這わせまくる。
可愛いシャツを無理矢理下着ごと捲り上げると、さっきまで恐々触っていた極上の胸がぶるん!!と露わになった。
真夢はかあっっ!と赤くなっても、抵抗はしなかった。俺は真夢の胸にむしゃぶりつく。夢中で口に含んでおもっきり味わう。
「んんっ、ふうっ、ちゅむ、ちゅる、れる、れろ、んむうう」
「あ……あ……あああ……!はあ、はあ、あ……」
乳首を舌で転がす度、真夢がびくんと震えて感じているのが分かった。
「ごめん、真夢、勝手に、俺……!」
「いいよ……弾くんなら、何されてもいい……」
「……っっ!!!」
「だから……お願い……」
そう言われた俺は、もう歯がカチカチして息をするのもしんどいくらい興奮しきって、腰も砕けそうだった。
焦りと興奮で震える手で、必死にベルトを外し、ズボンと下着を一気に下ろすと、ずっとずっと中で堪えていた張り裂けそうなペニスがぶるん!!!と勢いよく飛び出した。
「………!!」
真夢が息を呑み、驚いている。
真夢の下着を脱がす事もせず、くいっと横にずらすだけで一気に剥き出しにして、そのまま思い切り挿入しようとした。
「……ごめんな、真く……」
「謝るなら、しないで」
真夢の真剣で泣きそうな顔を見て、ハッとする。今更ごめんだなんて、どの口が言えるんだよ。言うならもっと別の……!
「真夢……愛してる」
「私もだよ……弾くん」
俺の言葉に真夢は嬉しそうに微笑んで、両手を広げて受け入れてくれた。
俺はゆっくりと慎重に、少しずつ、本当に優しく挿れていこうとしたんだが……
「あっっ!?」
先端が入った瞬間、何かぷちんと破れるような感触があって、真夢が小さく呻く。
「え?あ……」
見ると、結合部にうっすらとだが血が滲んでいて、俺は息が止まる。
「え………これ……」
「大丈夫だよ」
そう言うと真夢はふわりと笑った。その瞬間、自身がブワッと一回り大きく暖かく包み込まれた感覚があり、自分が射精した事が分かる。それが潤滑油の役割を果たし、真夢の奥までゆっくりと入り切った。
もう勤務時間ギリギリの休憩室。
お互い声を必死に押し殺して、でも我慢できずに漏れてしまう吐息や喘ぎ声だけが響いている。
「んん……っく……!」
「ん……!んん……!は……!~~!」
最初はゆっくりだったストロークも、徐々に速く、強くなっていく。本当は労うよう、労わるようにゆっくり優しくしたいけど、休み時間ギリギリの休憩室、キスさえさっきのが初めてだった俺が、心底惚れてる女相手に余裕なんてあるはずねえ。
「はぁ、は…、っく、真夢、お前痛い……のか?」
「んぅ……?ぜーんぜん……!」
「嘘つけ……」
「んふ……バレた……すごく痛いよ」
そう言って悪戯っぽく笑う。俺は真夢を強く抱きしめた。
「弾くん……えへ……幸せ」
真夢は俺の首に腕を回し、ぎゅっと抱きついてくる。
「俺もだ……」
「うん……」
真夢も俺も、お互いの身体も心も一つになって、必死に腰を動かす。必死に動かさなくても出ちまいそうだし、真夢の痛みを考えると申し訳ないと思ったが、それでも一生懸命動きたかった。
2人の絞り出すような嬌声とぱんぱんと肉を打つ音と、結合部からの水音が部屋に響き渡る。そこからは精液と愛液と血が混ざり合って掻き出されていた。
「あ……う……っ、真夢、俺もう……!」
真夢の耳元で自分の限界を告げると、真夢はしんどそうながらも蕩けそうな顔で同じように俺の耳元で囁く。
「いつでもいいよ……来て」
その言葉が腰を更に突き動かし、胸の奥、肚の底から愛おしさが込み上げてぎゅうっとなり、射精感へと導いていく。
耳元ではなく、耳にキスして、そのまま唇をつけたままダイレクトに言う。
「愛してる、真夢、ずっと好きだったし、これからもずっと……!」
声を出せないので真夢は「きゃうん!!」という嬌声を必死に噛み殺していた。
ずん、ずん、ずち、にぢっ、激しく重いピストンを奥の奥にねじ込んで、真夢の最奥と俺の先端がちゅうっ!とキスした事が分かると、俺は真夢の中にどくっ!どくっ!どくっ!どくっ!と何度も脈打ちながら、ありったけの子種を解き放った。
「……っっ!!……っっ!!!」
真夢は口を手で押さえ、声にならない叫びを上げ、全身を大きく痙攣させて俺の精をカラダの奥でこくんこくんと飲み干しているようだった。
涙の溜まった真夢の大きな瞳をキスして拭う。
「真夢……悪かった……!」
「まだ謝るの?謝られたら被害者みたいになっちゃうよ」
「違えよ。そんな事じゃない。こんな場所で、突然……て事に、だ。それに、痛かったな……?ごめんな、余裕なくて俺」
真夢は俺の言葉を聞いて、目を細める。
「そっか……、そうだよね。私こそ意地張ってるみたいでごめん。痛かったけど、幸せだからいいの……」
俺の背中に必死に手を回して抱きついて涙を流す真夢をギュッと抱きしめて濃厚なキスを落とす。
「でもな、俺の気持ちは本当なんだ。お前だけをずっと愛してる。信じてくれるか」
「信じるよ。だって、私も同じだからね」
「信じらんねえ……」
「むう、何それ!?信じてよ……」
聞けば、真夢は部屋に誰か入ってきた時、足音や気配で何となく俺だと分かっていた。声をかけられ頬を優しく叩かれた時点で俺だと確信していたが、イタズラ心で狸寝入りを続けてみた。しばらく顔をつねられたりのちょっかいに笑いを堪えるのに必死だったが、その次にはキスが降ってきて、その後にはもっと深いキスが、しまいには胸まで揉まれる始末。だが、その時の真夢は、これ以上ないくらい幸せを感じていたのだと言う。
「……」
「びっくりしたよ。まさか弾くんがキスしてくるなんて。そのあとはしばらくおっぱい触ってるしさ」
「ホント、すんません……」
やっと離れたからそっと目を開けてみたら、俺がいっぱいいっぱいになってて、まさに射精を堪えた時だったようだ。
「この機会を逃したら、もうこんなことはないんじゃないかと思って……されるがままのフリしててごめん。だから弾くんは何も悪くないんだよ」
泣きそうな顔で微笑む真夢にまた口づけする。
「好きだ、真夢。愛してる。今日だけじゃねえぞ。明日も明後日も、ずっと一緒だ……恋人になってくれ」
「うん!うん!嬉しい!大好きだよ、弾くん」
嬉しそうに返事をする真夢をもう一度強く抱きしめ、幸せと喜びを共有する。が……
「……と、この状況、どうすっかな」
時計を見るともう勤務時間が始まっちまった。俺はどうにかなるとはいえ、真夢には身体のダメージもある上に下着が……
「服は大丈夫……か?」
「うん、ギリギリいける……かな」
「でもそのし、下着じゃ着てらんないだろ」
血、精液、愛液でぐっしょりと濡れた下着を見てると罪悪感が込み上げてくる。
「あー……やっぱ替えないとダメだな」
「うん……。でも、もうデスクに戻んないと……」
俺は少し考えて
「わかった。じゃあ、お前は医務室にこのまま行け。貧血かなんか起こしたことにしておくから。そんで、俺は適当にどっかで必要なもん買ってくるから教えてくれるか」
と真夢に告げると、真夢は目を丸くする。
「え、弾くんが下着買ってきてくれるの?買いづらいんじゃない?」
「このご時世いけるだろ。プレゼントするカップルや夫婦もいるだろうし、女もん買ってもおかしくねえようなとこで適当に買ってくる。センスはこの際見逃してくれな」
そう言って笑うと、真夢はまた泣きそうな顔で俺にしがみついてきた。
「ありがとう……ありがとう、弾くん。ずっと、ずっと好きだったの。弾くんのこと、ずっと……」
「俺の方こそありがとう、だぜ。俺の方がずっと前から好きだったんだからな」
「私だよ!」
「俺だって」
「私!」
「俺!」
「……っぷ!」
「くくっ……」
「ふふっ……」
お互い、子供のように言い合って、それが可笑しくて2人で笑って、キスをする。
「さ、これ以上仕事中にこんな事してたらバチが当たるな。この部屋片付けたら買い物行ってくるから、お前は医務室行ってこい」
「ありがとう、弾くん……」
またあとで、と言い合って真夢は休憩室から出ていくが、すぐ戻ってくる。
「どうした?何か忘れもん?」
「違うの……これ見て……」
真夢は一枚の紙を持って俺の方にやってくる。何だ?とその紙を見ると……
『急病人看病中の為しばらく入室は控えて下さい』の文字が。
「これ……源さんの字だよね」
「多分……そうだな」
粋でいなせないい男、を表したような男らしい字。後から確認すると、やはりこれは源三が書いたもので、中々戻らない俺と真夢を心配した源三、ミカ、カンナの三人が気を利かせて誰も来ないよう貼ってくれたのだそうだ。
「通りで誰も来ないと思ったぜ」
「私が弾くんを好きだから、弾くんを来させてくれたんだね皆んな」
「いや違えだろ。俺が真夢を好きだからだろ?」
二人でまたくすっと笑い合う。そして今度こそ真夢は医務室へと向かい、俺は部屋を換気して汚れた床やソファを掃除してから買い物へと出かけた。
真夢に必要な物を渡し、真夢は自分のデスクに、俺は現場へと向かった。
ここ最近の激務が幸いして、真夢の疲労や貧血を疑うものはいなかったようだ。それどころかいたく心配されたと真夢は申し訳なさそうにしていた。
一方の俺も遅れて現場へ向かうと、源三とミカが当たり前だが仕事をしていた。
「遅れてすまなかった」
声をかけると二人は一瞬こちらを見やり、「お疲れ〜」「おう、大変だったな」と声をかけてくれる。
「あと、その……貼り紙、助かった。色々と迷惑かけちまってすまない。この埋め合わせは必ずするよ」
そう言うと、二人はじっと俺の顔を見て
「筋肉エロ男」
「盛り狼」
と声を合わせて呟いた。
「なっ!!?」
しっかりバレてやがんのか。
「バレんに決まってんだろ!?ったく、ツヤツヤして戻ってきやがって。真夢にゃ悪いが、これまで忙しくてへばってたのが周りには功を奏したな。俺たち以外にゃバレちゃいねえよ」
「あの状況で二人して戻ってこないって事はそういう事なんだろうなって思ってたよ。良かったねぇ弾。両想いだってわかって」
「マジかよ……いつから知ってたんだよ」
「「最初から」」
二人揃って同じ事を言われて、俺は思わず苦笑する。
「でも、やっとくっついたんなら真夢を大事にしなさいよ。泣かしたらぶった斬るからね?」
「分かってる。絶対に幸せにするよ」
「いい返事だ。頑張れよ」
「ああ。ありがとよ」
そう言って俺は自分の持ち場に戻り、作業を再開した。
その日の夜、俺は真夢と二人で飯を食っていた。
「まさかこんな事になるとはな」
「うん……弾くんのすけべのおかげだね」
「おい、誤解を招く言い方すんな」
「えー、だってそうじゃん。寝てる相手にさ……」
他の人だったら訴えて一発退場だよ?と真夢はデカい一口でもぐもぐ飯を食っている。ホント、飯を美味そうに食う奴は女に限らず最高だよな。真夢なら更に最高だけど。
「だからそれは悪かった。謝るから勘弁してくれ」
昼間の一件について、俺は素直に頭を下げる。真夢はそんな俺を見て、くすっと笑って言った。
「冗談だってば。私だって嬉しかったもん。それに、今はこうして恋人同士になれて凄く嬉しいから。許してあげる」
そう言って真夢は俺に微笑みかける。
「……お前の食ったもんは、乳と尻にしかいかねえのか?そんなに細いのに何でその二箇所だけむちむち……」
「源さんかカンナちゃんに弁護士さん紹介してもらおっかなあ」
「ごめんなさい」
俺の軽口をさらりとかわし、真夢はまたクスッと笑う。こういう付き合い始めのやり取り、これがまた楽しい。
「ところで、これからどうしようか?」
真夢は箸を止めて俺を見る。
「そりゃ……勿論、なあ」
「ん……?」
「今晩は、その、お、俺の家に……」
俺がそこまで言いかけた所で、真夢は何かを察したようで顔を真っ赤にして少し俯いた。
「ご、ご飯食べ終わったら、弾くんの家に行ってもいい……?」
「……ああ、もちろんだ……!」
お互いの家に行くのは初めてじゃないが、今日からはもう違う。恋人として、初めて行くんだ。
「じゃ、早く食っちまうか!」
「そ、そうだね!急ごう!」
そうして俺達はいつもより早いペースで食事を済ませ、店を出た。
家に着き部屋に入ると、俺達は何も言わずに唇を重ねた。
「真夢……好きだ。ずっと、会った時から」
「うん……ありがとう……私もずっと好きだよ……」
ちゅ、んちゅ、むにゅ、ぐにゅ、という音が部屋に響き渡る。俺達がお互いを求め合う音だ。
「好きだ。本当に好きなんだよ」
「わ、私の方が好きだよ。……あ」
そっと真夢を押し倒す。
「真夢……」
「弾、くん」
真夢の胸に触れる。服越しなのに柔らかくて気持ちいい。
「んっ」
真夢はぴくりと身体を震わせる。俺は真夢の首筋に舌を這わせながら、真夢の胸に手を沈めていく。
「休憩室のソファの次は床?」
イタズラっぽく真夢が笑う。
「そうでした、失礼しました。よっと」
「きゃ!?」
真夢を抱き抱え、隣の部屋へ運んで足で布団を敷く。
「布団で勘弁してください、お姫様」
「いいでしょう」
顔を見合わせて二人でくすくすと笑い合い、俺達はキスをする。
「な、なあ、その、アレだ、その……いい、よな?」
「……うん」
少し恥ずかしそうな真夢。俺はゆっくりと真夢を脱がせていき、俺自身も脱いでいく。休憩室では着衣セックスっていうとんでも初体験だったからな。
「私なんて服捲り上げられておっぱい出されるわ、パンツだって脱がしてさえ貰えずにクイッとされただけだったんだからね!?」
真夢は真っ赤になって訴える。
「ごめんごめん、悪かったよ。夢中でさ。それは今もだけど。すげえ綺麗だよ、真夢」
俺の言葉に真夢は更に頬を赤く染めて俺の身体を見る。
「弾くんこそ綺麗。タンクトップ一枚脱いだだけでこんなに違うんだね」
ゆっくり優しく抱きしめると
「あったかい」
「気持ちいい」
同時に口をついて出た言葉に二人ともくすっと笑ってしまう。
「弾くん、大好きだよ」
「真夢……愛してる」
もう一度軽く口づけをして、お互いを求め合った。身体を触り合い、唇を這わせ、たまに痕を残す。
「休憩室では声出せなかったからな……あれはアレで超興奮したけど」
「変態」
「うるせえ」
「あんっ」
乳首を吸うと真夢は甘い声で鳴く。
「今回は可愛い声、聞かせてくれよ。つっても、ここも壁薄いからほどほどで頼んます……んあっ!?」
胸筋から腹筋まで、すーーーっと指でなぞられて変な声が出た。
「弾くんこそね」
「うるせ……あとさ、コレ」
「あ……」
昼間の買い物のついでに買っておいた避妊具を取り出すと、真夢は小さく声を漏らした。
「昼間散々中出ししといて今更なんだけどさ」
「ううん……ちゃんと考えてくれて、大事にしてくれてありがとう」
真夢は嬉しそうに笑う。可愛い……頬を撫でながら俺は言う。
「もし……その……妊娠してたら、ちゃんと言ってくれよ」
真夢は驚いたような表情を浮かべた。
「俺さ、成人しててもまだまだガキだし稼ぎも少ねえから、何が出来るかって言われればそれまでだけど。それでもさ、一緒に考えさせて欲しいんだ。お前と、お前との子供のために」
「うん……ありがと」
真夢はそう言って俺の頭をぎゅっと抱き寄せた。
本当はまだ痛みが残るだろう真夢を抱くのは躊躇われたが、真夢はそれを許さなかった。
「大丈夫だから。今度はちゃんと、ゆっくり弾くんのものにして」
俺の躊躇いを吹き飛ばした真夢は俺を受け入れてくれた。俺の背中に手を回し、俺の動きに合わせて腰を振ってくれる。
「んっ……んんっ……」
俺達はお互いを感じ合いながら一つになった。なるべく痛くないよう、気持ち良くなれるよう、お互いを慈しみ合いながら。
「真夢……真夢……!」
「弾くん……弾くん……!」
何度も名前を呼び合って、強く抱きしめ合う。
「好きだ、大好きだ……」
「私の方が好き……んんっ……」
最後は二人で果てて、そのまま眠りについた。
思いもよらないところから俺と真夢は恋人同士になったが、これから先どんな事があるのか分からない。
でも、これだけは言える。俺は真夢を絶対に幸せにする。
真夢となら、きっと乗り越えていけるはずだ。
俺達は、この日確かに結ばれた。
心も、身体も、運命さえも。
俺と真夢はこの日から、お互いの命がある限り、ずっと共にあるのだった。数十年先まで、ずっと一緒に。永遠に。
***以下、完全に自己満足のボーナストラックですので、ご興味ある方はどうぞ。お子ネタですので閲覧は超ご注意下さい***
数ヵ月後、俺と真夢は一緒にとある病院にいた。
「はい、これお薬ね。二週間分あるから、毎日忘れずに飲んでくださいね」
受付の女性にそう言われ、俺と真夢は頭を下げてお礼を言う。そして真夢の方をちらりと見ると、真夢も俺の方を見て微笑みかけてきた。俺もそれに笑顔を返す。
自分たちでも検査し、病院でも検査を受けたところ、真夢は妊娠していたのだ。
しかも、この子は、あの時の休憩室の時の子ではない。
あれから俺たちはお互いに今の相手しか考えられないと自他共に結論を出し、早々に籍を入れ夫婦になっていたのだ。
それからは張り切って作ることも、また避妊することもなく、その時の天命に任せるまま身体を重ねていたのだが、割と早々に真夢は妊娠したのだった。
もちろん俺は真夢の決断を尊重するつもりでいたし、俺自身も産むしか考えられなかった。
勿論すぐに父親になれる訳じゃないが、こうやって少しずつ親になる準備をしていくのだと思うと不思議とワクワクする。真夢のお腹をそっと撫でてみる。
「んっ」
真夢はくすぐったそうに身をよじらせた。
「元気に生まれてきてくれるといいな」
「そうだね。弾くんのお父さんもお母さんも、妹さんも優しい人だから安心だよね」
「おいこら、俺は優しくないみたいな言い方だな」
「え?だってほら、私のことあんな風に強引に休憩室でいきなり押し倒したりしたし」
小声で真夢は言う。
「ぐっ……あれはだなあ、その、勢いっていうかなんというか……まあでも、優しくなかったとは思ってねえぞ」
「まあね。愛情は……あったかな」
だからあなたが来たんだよね、とお腹をさする真夢は聖母のようだった。
「早く生まれて来いよ~、パパとママは待ってるからな」
「あ、動いた」
「マジ!?」
「嘘だよ〜。今はまだ米粒より小さいんだからわかるわけないでしょ」
「騙しやがったな!?」
「ふふん、引っかかる方が悪いんだよ〜だ」
俺達の様子を、待合室に座っている他の妊婦さん達がクスクス笑いながら見ている。どうやら仲の良い夫婦だと認識されているようだ。
「もう……恥ずかしい」
「すまん」
耳まで真っ赤になって俯く真夢に謝る。
「でも、幸せだよ。こんな幸せな気持ち、今まで感じたこと無かった」
「ああ、俺もだよ」
俺達は見つめ合い、二人でお腹をさする。
「よかったね。みんな楽しみにしてる。ちゃんと無事に育つんだよ」
「そうだな。俺達の子供なんだもんな」
それから。初期こそ真夢は出血止めなどの薬を飲んで安静にしていたが、それから後はほぼ何の問題もなく順調に経過していった。
「よしよし、おうちゃんは可愛いね」
まんまるになった重そうなお腹を撫でながら、真夢は笑顔で話しかける。
「おうちゃん?」
「うん、胎児名……って言うのかな。弾くんの口癖から取ったの。どうかな?」
「おう、いいじゃねえか。……あ」
「あははは、ほらね」
真夢は相変わらずコロコロ笑っている。俺はそんな真夢を見ているだけで幸せな気分になった。真夢とこの子の為なら何でも出来る気がする。
「……なぁ、真夢」
「んー?何、弾くん」
「俺さ、頑張るから」
言われた真夢はじっと俺の顔を見る。そして
「ありがとう。でも、頑張りすぎないで。普通に、ちゃんと、生きていてくれたら、多分私達は幸せだから」
「……分かった。ありがとよ、愛してるぜ真夢。お前もな」
真夢のお腹に手を乗せるとボコボコと蹴られた。
「おーおー、足の強いこと」
「本当だよ。痛いんだからね、ぐりぐりされると」
そう言いながらも真夢は本当に幸せそうに笑う。
俺はこの笑顔を絶対に守ろう。心の底からそう思ったのだった。

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